髄膜腫は、形態や発生母地に加え、硬さによって手術の難易度は異なる。術前に髄膜腫の硬度を計測する方法として、直接頭部に振動を加えながらMRIを撮像するMR elastgraphyがあるが、振動を加える特殊な装置が必要があり、どの施設でも撮影できるわけではない。近年、拡散強調MRIの基礎的概念であるintravoxel incoherent motionを外部振動による組織の影響を考慮したパラメータ設定を応用し、腹部臓器の弾性率を術前画像から推定する手法が確立された。本研究では、この方法を基礎にしてMRIを用いて新たな術前髄膜腫硬度推定法の確立を目指ものとした。
現在まで開頭頭蓋内腫瘍摘出術が施行された髄膜腫76ROIに対してMRI撮影及び高度計による評価、術中主観的腫瘍硬度の評価を行った。超高磁場3TMRI装置を用いて、b=0~1500 [s/mm2]の複数個のb 値の撮像を行った。それらから得られる一般的なapprent diffusion coefficient(ADC)と最適なパラメータ設定で推定されたADCを解析に用いた。ADCは2つのb値を用いて撮像された拡散強調像から算出される拡散係数で拡散の程度を定量的に表現することが出来る。本研究では一般的に臨床で用いられるb=0、1000と最適なb値であるb=200、b=1500から得られる2種類のADCと、それぞれ(高度計および術中主観的硬度評価)の硬さにつていて解析を行った。その結果、2つのADCそれぞれで相関が認められるが、相関係数としてはb=200、b=1500から得られるADCの方が大きい傾向が認められた。 最終年度はこの結果を論文にして、Journal of Neurosurgeryに掲載された。
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