研究実績の概要 |
摂食障害患者の親子関係と体重回復の関連は不明である。時間依存性の交絡因子の影響を考慮し、この関係を明らかにすることを目的とした。 方法は、2014ー2016年厚生労働省補助金で収集された多施設コホート研究データを用い摂食障害により体重が減少した10代を特定し1年以内に体重が回復をアウトカムとした。親子関係と体重回復の関係は時間依存の交絡を考慮した限界構造化モデルで分析した。 結果は、合計129名(女性93%)で初診時年齢は中央値13.1歳であった。初診時に推定罹病期間は中央値6.5か月であった。診断分類は神経性やせ症が69%であった。初診時の健康時からの推定体重減少は中央値8.5kg、最大25kg 以上であった。1年後の体重に欠損値が多かったため1年間の体重変化を観察できたのは64 名のみであった。初診時の親子関係が良い群(n=31)とそうでない群(n=33)とでは、観察終了時の体重増加に有意差は認めなかった。しかし、観察終了時の親子関係が良い群(n=37)とそうでない群(n=27)とでは、親子関係が良い群がそうでない群と比較して有意に体重が増加(10.8kg vs6.7kg, p=0.022)していた。周辺構造化モデルでは、親子関係が良いと体重回復のodds ratio は2.3倍となったが有意差は無かった。 本研究は摂食障害の10代の若者における親子関係と体重回復の間の関係を調査した。親子関係が良好であるほど、体重が回復する可能性があることがわかった。しかし、結果は統計的には有意ではなく、更なる研究が必要である。この研究は、摂食障害の治療において家族のサポートが、病気の治療において重要な役割を果たす可能性を示した。しかし、この研究結果はあくまで傾向を示しているもので、全ての場合に当てはまるわけではない。本研究の結果は、摂食障害の治療法の改善につながる可能性がある。
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