研究課題/領域番号 |
19K17290
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
相澤 悠太 新潟大学, 医歯学系, 助教 (90808453)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | パレコウイルス / 敗血症 / 新生児 / 早期乳児 / 疫学 |
研究実績の概要 |
54人が対象として本研究に組み込まれ、パレコウイルスA感染症1人、エンテロウイルス感染症0人であった。検出されたパレコウイルスA感染症は、11月に発生があり、従来の夏ではない時期であった。また、2020年度の症例集積があった場所とは異なる地域であった。 初年度は国内の小児入院施設における本疾患の疾病負荷の全体像をつかみんだ。2年目は、例年一定数の検出があるはずのエンテロウイルスが検出数ゼロであり、COVID-19のパンデミックの影響を反映していると考えられ、3年目の2021年度もゼロのままであったため、COVID-19のパンデミックにより早期乳児の敗血症自体が減ったままであることが示唆された。国立感染症研究所の病原体微生物検出情報では2021年度はパレコウイルスAの検出数は17例であった。本研究は従来の全国調査よりもパレコウイルスAが重症感染症を起こす早期乳児にターゲットを絞っており、2021年度は早期乳児ではなく主に年長児でパレコウイルスA感染症が発生していた可能性が推測された。 本研究の小児入院施設全国ネットワークによって、一部の地域におけるパレコウイルスA感染症の局所的流行をつかむことできている。また、パレコウイルスA3感染症は2,3年ごとに流行を繰り返すことから、疫学情報が特に流行早期においては本疾患を疑う契機として重要であるが、本研究で立ち上げた全国ネットワークが流行の最初をつかめる可能性が初年度に、日本の一部の地域での局所的流行を従来の全国疫学調査よりも鋭敏に検出できることが2年目に示唆された。3年目では、COVID-19パンデミックの影響で減少した早期乳児敗血症の中でもパレコウイルスA感染症が存在していることが示された。さらに、本研究の体制とパレコウイルスAの検出状況を公開するウェブサイトを作成し、本研究に参加していない施設の医療者にも情報を共有できるようにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各施設で本研究組み入れ基準該当者のチェックが行われ、適合者がいた際には随時検査ならびに臨床情報の収集が行われている。 各施設とのコミュニケーションも良好に保てており、適宜データの情報共有と議論も行えている。 ただし、2021年度は2020年度に引き続きCOVID-19パンデミックの影響で早期乳児の敗血症自体が全国的に少なかった。そのため、研究の体制としては順調だが、3年目も2年目同様に研究取り込み数は少なく、パレコウイルスA感染症が少ない年であった、という点が本研究としては難点ではあった。ただし、パレコウイルスAは2,3年ごとに流行し、COVID-19とは関係なくパレコウイルスAが検出されない年であった可能性もある。
|
今後の研究の推進方策 |
パレコウイルスA3感染症は2,3年ごとに流行を繰り返すことが知られているため、同様の研究を継続することによって、疫学を全国の小児入院施設の観点から評価する本来の意義が高まる。そのため、同研究を継続する。COVID-19流行は続いているが、社会全体の行動制限は緩和される方向にある。それに伴って市中感染症が増えた場合、パレコウイルスAも増加するのか、2021年に過去にない大流行を起こしたRSウイルスのように急増することもあるのか、本研究によって引き続き注視し、これまでと異なる疫学パターンを示すかどうかを検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
パレコウイルスA3感染症は2,3年ごとに流行するため、その年によって発生患者数は異なる。所要額は、その2,3年の発生数を平均した数で概算し請求していた。今年度も大きな流行は認められなかった。さらに、COVID-19流行に伴い学術集会が中止、もしくはweb開催に切り替わったため、旅費が発生しなかった。それらの影響で、当初の計画の金額を下回る実際の使用金額となった。来年度で大きな流行があった際には、平均した数で概算した金額を上回る費用が必要になる可能性がある。来年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、主に実験試薬に対して使用する予定である。
|
備考 |
本研究の体制、疫学の最新情報、研究業績、さらにパレコウイルス感染症の一般的事項をまとめたウェブサイトを作成した。
|