川崎病(KD)は小児の後天性心疾患の最も一般的な原因である全身性血管炎であるが、病因は未だ不明である。ロングノンコーディングRNA(lncRNA)は、様々な疾患の病態生理に寄与することが知られている。本研究ではKDの炎症におけるlncRNAの役割を調べた。 KD患者末梢血単球から抽出したRNAにおいて、lncRNAを含む発現遺伝子の違いを調べるため網羅的解析法であるCap解析遺伝子発現シークエンス(CAGE-seq)を行った。21の候補lncRNA転写産物が同定され、リアルタイムPCRで検証し、RP1-28O 10.1のみがKD急性期で有意に発現が上昇し、IVIG後に速やかに低下していた。CAGE-seqによる解析と遺伝子オントロジー解析により、KD急性期単球で検出された発現変動mRNAは、免疫系プロセスに関与していることが明らかになった。これらのうち、タンパク質コード遺伝子G0S2はRP1-28O 10.1と相関係数が高く、またKDの急性期に発現が亢進していた。THP-1monocyteによる実験で、G0S2とRP1-28O 10.1は共にtoll like receptor(TLR)経路を介して炎症を誘発することが示唆された。THP-1monocyteにおけるG0S2の発現ノックダウン実験より、G0S2はRP1-28O 10.1を介してTLR経路による炎症性サイトカインを制御していることが示唆された。 G0S2とRP1-28O 10.1はゲノム内で相補鎖にエンコードされ、またRP1-28O 10.1はantisenseRNAであることからG0S2の発現を調節していることが考えられた。本研究では、G0SがRP1-280 10.1と相互作用しKDの自然免疫に重要な役割を果たすことが示唆され、lncRNAの役割解明は、今後KDの有用な治療標的となりうる可能性がある。
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