研究課題
自己炎症性疾患は、1999年Kastnerらにより提唱された自然免疫系の遺伝子異常により発症する主に遺伝性の炎症性疾患である。インフラマソームの活性化により発症する代表的な自己炎症性疾患としてNLRP3機能獲得型変異により発症するクリオピリン関連周期熱症候群と、NLRC4機能獲得型変異により発症するNLRC4異常症が存在する。クリオピリン関連周期熱症候群は周期熱、蕁麻疹様発疹、関節炎などを特徴とし、日本では100人ほどの患者がいると推定されている。病態の中心は過剰産生されるIL-1βである。NLRC4異常症は、血球貪食症候群、腸炎、蕁麻疹様発疹などを主症状とする。日本においては数十人の患者がいると推定されている。病態の中心は過剰産生されるIL-18である。NLRP3、NLRC4の活性化による細胞死はパイロトーシスが広くしられているが、パイロトーシスとは異なるNLRP3、NLRC4インフラマソーム活性化による細胞死が存在すること、またインフラマソームは共にIL-1β、IL-18を産生するが、NLRP3、NLRC4の機能獲得型変異により、なぜそれぞれ過剰産生されるサイトカインが異なのかを明らかにすることを目的とする。インフラマソームは痛風、心筋梗塞、多発性硬化症など種々の病気と関連しており、NLRP3、NLRP4疾患関連変異によるカスパーゼ1非依存性細胞死の機序を解明することは、インフラマソーム関連疾患の病態解明、治療標的の発見につながることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
自己炎症性疾患は自然免疫系の遺伝子異常により発症する炎症性疾患である。クリオピリン関連周期熱症候群、NLRC4異常症はそれぞれNLRP3遺伝子、NLRC4遺伝子の機能獲得型変異によるインフラマソームの過剰活性化を主病態とする。我々はこれまでNLRP3機能獲得型変異によるインフラマソームはカスパーゼ1非依存性であることを報告している。また、単球系細胞株であるTHP-1細胞を用いて、NLRP3機能獲得型変異の疾患関連性の評価系を確立させてきた。今年度までの研究により、NLRC4機能獲得型変異において疾患関連性を評価する系を確立することができた。これまで報告されている変異NLRC4遺伝子(T177A、T337S、V341A、H443P)をTHP-1細胞遺伝子導入したところ、野生型NLRC4遺伝子または遺伝子多型と考えられる塩基置換(L70F、S522P)の導入に比べて有意に細胞死を起こすことが再現性をもって確認された。またこの機能獲得型NLRC4変異による細胞死は、阻害薬実験により、カスパーゼ1非依存的で、カテプシンB依存的であることが確認された。また上清中のサイトカイン測定により、炎症性サイトカインが上昇していることが確認された。
クリオピリン関連周期熱症候群、NLRC4異常症はそれぞれNLRP3遺伝子、NLRC4遺伝子の機能獲得型変異によるインフラマソームの過剰活性化が真にカスパーゼ1非依存的であるかを確認するために、カスパーゼ1をノックアウトしたTHP-1細胞を樹立する。これにより真にカスパーゼ1非依存的であるのかを確認する。その後にCRISPR/Cas9システムを用いて、THP-1細胞においてゲノムワイドノックアウトを行い、NLRP3、NLRC4に関連した細胞死の経路において必須な分子の同定を目指す。
ゲノムワイドノックアウトの解析を次年度に行うこととしたため
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