研究実績の概要 |
新生児敗血症は、予後不良疾患であり、現在もなお高い致死率・後遺症発症率を認める。特に宿主防御機構が未熟な早産児においては、現行の抗菌薬治療単独での救命は困難であり、新規治療法開発は喫緊の課題である。本研究課題の最終目標は、新生児臍帯由来の間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSCs)を用いた新生児敗血症治療法を確立することである。昨年度は、前年に確立・樹立した動物モデルおよび薬物治療実験系を用いて、予備実験として以下のように成獣マウスを用いたMSCs投与実験を行った。 (1) CS保存液の作成:動物実験施設の承認後、10週齢の成獣マウスを安楽死し、虫垂を摘出し、虫垂内容物を15%glycerol-PBSに溶解し糞便懸濁液(Cecal Slurry, CS 100mg/ml)を作成した。全実験を通じ同一起源のCS保存液を用いた。 (2) マウス敗血症モデルの作成:CS 20mg(0.2ml)を32週齢(成獣)の野生型FVBマウスに腹腔内投与し、敗血症を誘導した。 (3)MSCs投与実験:敗血症誘導24時間後に、MSCs(0.1×106cell, 0.5ml , n=18)またはPBS(0.5ml, n=9)をマウスに腹腔内投与し、敗血症誘導後5日目の体重変化率および5日間生存率を比較検討した。 結果は、MSCs投与群とPBS投与群で、体重変化率(MSCs群:-11.4±7.6% vs. PBS群:-9.0±5.7%, p=0.4)および、死亡率(MSCs群:94% vs. PBS群:100%, p=0.5)に差を認めなかった。 以上より、成獣マウス敗血症モデルにおいては、MSCs投与は敗血症保護効果を示さなかった。今後は、新生仔マウス敗血症モデルにおける検討、MSCs投与量を増量しての検討、MSCs投与が酸化ストレス動態に及ぼす効果の検討を予定している。
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