研究課題
本研究では、ガラクトシアリドーシスの新規治療開発のためアンチセンスを用いたエクソンインクルージョン療法の有効性に関して検討した。ガラクトシアリドーシスは多機能蛋白であるライソゾーム保護性タンパク質/カテプシンAをコードするCTSA遺伝子の異常で発症する。PPCAはノイラミニダーゼ-1、ガラクトシダーゼβなどの酵素の安定、活性化に影響を与える多機能タンパク質であるため多彩な症状を呈そ、その影響をうける酵素の種類が複数にわたるため酵素補充療法などの根治的な治療方法は現在ない。我々は日本人の罹患者においては、高頻度にIVS7+3A>Gの変異によってエクソン7の欠失が起こり、その影響で正常な蛋白が合成できずに発症する点に着目した。まず我々は患者血液検体からCTSA遺伝子の解析を行い、本変異を有している患者であることを確認した。また患者リンパ球よりmRNAの解析を行ったところ、当初想定していたエクソン7のみが欠失したmRNAだけでなく、エクソン6とエクソン8の間に"gt"が挟まれる形で存在するmRNAを新たに確認した。さらに、我々はminigeneを用いたin vitro の解析においても、患者にみられたIVS7+3A>G変異をHeLa細胞にトランスフェクションした細胞からmRNAを強制発現させた後、cDNAを作成した。多くのコロニーではエクソン7の欠失のみがみられたが、一部のコロニーではエクソン6とエクソン8の間に"gt"が挟まれるcDNAを確認できた。以上から日本人に高頻度にみられる本変異は通常のエクソン7欠失を引き起こすだけでなく、エクソン7欠失後にエクソン6-エクソン8の間に"gt"が組み込まれるmRNAが産生されていた。本変異に対してエクソンインクルージョン効果を示すアンチセンスの作成はできなかったものの、本変異の引き起こす新たな発症メカニズムの可能性が示唆された。
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