薬剤耐性菌は世界的な問題となっている。特にESBL産生大腸菌は小児の尿路感染症の原因菌となり、その数は年々増加している。しかし、いつ、どこで乳幼児がESBL産生大腸菌に感染するかは明らかになっていない。 妊婦の膣培養からESBL産生大腸菌の検出が増加していることから、乳児への感染経路の一つとして、母子感染が示唆された。しかも、生後半年未満の早い時期に、ESBL産生大腸菌による尿路感染症が増加しているため、生後早期に母児感染が起きており、更にESBL産生大腸菌に感染すると、尿路感染症のリスクが高まる可能性が示唆された。 このESBL産生大腸菌の母子感染と、その後の尿路感染症の発症リスクを明らかにする目的で、生後4-5日目と、1か月時に新生児の便培養を行い、ESBL産生大腸菌の検出を調べることが本研究の目的である。 このESBL産生大腸菌の感染経路を明らかにできれば、感染の拡大を抑制することができる。更に、乳児期のESBL産生大腸菌への感染が尿路感染症のリスクを上昇させるのであれば、感染対策を行うことで、尿路感染症の発症率を下げることができる。また、ESBL産生大腸菌を保菌する乳幼児や、母親が保菌している乳幼児が細菌感染症を起こした場合、適切な抗菌薬を早期に使用することで、治療期間の短縮が可能となり、新たな薬剤耐性菌の出現を抑えることができる。 研究体制が整った2019年10月から本臨床研究を開始し1年間で予定よりも多くの検体を得ることができた。 現在、データ解析を行っている。
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