研究実績の概要 |
STAT1の機能獲得型(GOF)変異は、慢性の皮膚粘膜カンジダ感染(CMC)を主要症状とする原発性免疫不全症を引き起こすが、一部のSTAT1-GOF変異では、多腺性内分泌不全症などの複合型免疫不全症とされる重症例が存在する。本研究において、重症化する臨床像を呈するT385M変異を有する日本人例(2家系2症例)、好発変異であるR274変異を持つ3家系3症例を同定した。同定されたT385M変異の臨床像は、1例は臨床的に免疫症状が強くIPEX-like症候群と診断されており、一方で別症例は、比較的軽症の臨床経過を示した。そのため、同一変異においても重症度が異なることが示された。また、健常者、患者3例(T385M変異:2例, R274Q変異:1例)の末梢血から、磁気細胞分離によりCD3+CD4+ヘルパーT細胞、CD3+CD8+キラーT細胞を単離した。単離した細胞をIFN-γで刺激し(0, 10, 100 IU/ml, 8 hr)、刺激後の網羅的な遺伝子発現プロファイルをRNA-Seqで解析した。IFN刺激はJAK-STAT経路を介し、ISG(Interferon-stimulated genes)と呼ばれる一連の遺伝子群の発現を活性化するが、重症のT385M変異症例では、IFNγ刺激により過剰なISGの発現増強を認めた。他方で、軽症のT385M変異症例では、ISGの発現増強を認めず、同じ変異においても遺伝子発現プロファイルに相違があることが示された。また、R274Q変異ではIFN-γの刺激によるISG群の増強は認めず、比較的重症度の低い臨床像を示したT385M症例と類似した遺伝子発現プロファイルを示した。これらの結果から、ISGの発現増強と重症化には一定の関連性が存在すると考えた。一方、特定の変異とISGの発現との間に明確な関連を見いだすことはできなかった。
|