研究課題/領域番号 |
19K17311
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
平田 倫生 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 副医長 (60769636)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新生児 / 呼吸障害 / 胃食道逆流現象 |
研究実績の概要 |
新生児、特に2500g以下の低出生体重児や在胎37週未満で生まれる早産児では、生まれたあとに思いのほか呼吸障害が長く残り、治療に難渋することがしばしばある。これは、肺が新生児の臓器のうち唯一出生して初めて本来の働き、つまりガス交換を始めることと深く関係しており、新生児の適応障害のひとつと考えられる。 その原因として、肺水(羊水)の排泄の遅延や肺サーファクタントの欠乏や分泌不全がその主な原因として考えられているが、以前より、胃食道逆流現象による誤嚥も長らく一因として挙げられているが、既存の検査方法では新生児では胃食道逆流自体の証明が技術的に難しかった。 筆者は近年成人領域で広く使われ始めた24時間持続食道インピーダンスpHモニタリングにより、呼吸障害をもつ新生児の治療戦略のひとつとして、新生児における胃食道逆流の実態を解明し、その対策の基礎データを収集し分析し臨床に役立てることを目的として研究を開始した。 昨年度の研究基金交付より、研究器材、消耗品の購入、当学の研究倫理審査委員会による研究内容の審査に約半年を費やしたが、その後、被検者のリクルートは比較的スムーズにスタートすることができ、データ収集と解析は予想よりも困難ではない印象である。しかし、昨年度末からの新型コロナウィルスのパンデミックの影響で、他の研究者との会議や学会出席が大きく制限されている状況であり、しばらくの間は研究の進行が遅れることはやむを得ない状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象となる新生児症例は一定の割合で出生しているが、昨今の新型コロナウィルスパンデミックにより、出生数の減少及び臨床的な配慮への努力が増し、人的パワーおよび患者の研究への同意を得にくい状況に一時的に陥っていることに加え、研究内容に対する英国ロンドン大学でのラボミーティングおよび現在最も本題に多くの演題が提出される英国および米国消化器病学会のために渡航、出席の予定であったが、いずれも新型コロナの影響による我が国からの国外渡航の禁止措置により不可能になった。また、実際ロンドン大学でもこの分野の研究、臨床が滞っている状態である。 これら予期せぬ状況により、外部との本研究に関する相談、接触の道は現在断たれているものの、研究自体のデータ収集は、予定よりはやや遅れてはいるものの進んでおり、すでに仮説に基づいた興味深い結果が出ている。ただこのままの状況が長期間続く場合、結果の解析や発表に影響が出てくる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
幸運にも、検査機器の欠品や出生数の大幅な減少など、データ収集に関しては大きな障害はないため、引き続き、当初の研究計画に基づき、呼吸障害で治療中の新生児に対するデータ収集を継続し目標のn数を達成することを当面の目標とする。研究データの解析方法が本研究の最も重要な部分であるが、それに関してはメールなどを介して、各国の専門家と協議しながら進め、できるだけ早い段階で英米の消化器病関連学会での発表を目指すが、新型コロナパンデミックの状況が遷延し現在の状況が持続する場合は、早期の論文化を目指すことになる。 いずれにせよ、一度は英国の実際の検査状況(手法、解析など)の確認とラボミーティングは必要と考えており、早期の事態の収束を願うばかりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機器一式の価格交渉が順調に進んだため、予想より安価に一式の購入ができたこと、および予定していた英国でのラボミーティングを中止せざる得なかったことから、次年度への繰越金が発生した。しかし、本年度にそれらを有効に使用しながら本年度分の作業を進める予定である。具体的には、解析に関するコンピュータ、学会参加費、旅費、被検者数の増加により追加で発生する検査カテーテル費用などがそれに当たる。
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