研究課題
ヒトは胎児期から多数の疾患に罹患しうる。従来、胎児診断が困難であった疾患が、画像診断の進歩によって診断できるようになってきた。胎児治療を可能とする疾患が増えてきているが、胎盤を介した母体と胎児との複雑な相互関係、羊水中という特殊な環境、胎児が小さく臓器も未熟で発達過程にあるということが、子宮内での胎児治療を困難とし、予後不良となる疾患も少なくない。胎児形態異常のうち脊髄髄膜瘤や腹壁破裂といった体表が欠損する疾患は、子宮腔内に消化管や脊髄といった臓器が露出し、胎児期から進行性の臓器障害を引き起こす。本研究では、羊水由来iPS細胞から培養表皮を作製し、胎内で欠損部に自家移植することで進行性の臓器障害を軽減し予後の改善を図ることを目的とした。これまでに羊水中の細胞由来iPS細胞から分化誘導したケラチノサイトは、培養過程で性質の異なる細胞が増殖しやすかったことから、iPS細胞由来ケラチノサイトの培養条件の検討を重ね、純化処理技術を併用することで効率的にケラチノサイトを維持することに成功した。またケラチノサイトに3D培養を行い、胎児移植用の3D皮膚を作製し機能解析を行った。今後は、この3D皮膚の移植療法が、高いレベルのキメリズムを獲得できるかを胎児体表欠損モデルを用いて評価し、新たな胎児治療体系を構築する。羊水由来iPS細胞は胎児にとって自分の細胞であり、母体的にも比較的低侵襲で羊水を得られることから、羊水由来iPS細胞の性質や免疫寛容獲得のメカニズムを明らかにしていくことで、他の胎児治療への応用が期待できる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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