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2019 年度 実施状況報告書

胎生期の心臓房室弁・中隔形成における心室筋転写因子カスケードの意義

研究課題

研究課題/領域番号 19K17318
研究機関国立研究開発法人国立循環器病研究センター

研究代表者

瀬谷 大貴  国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30806021)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード転写調節因子 / 先天性心疾患 / ノックアウトマウス / 形態形成 / 発生・分化 / 発現制御
研究実績の概要

先天性心疾患はさまざまな心臓前駆細胞群の増殖・移動・極性などの制御機構障害のため発症すると考えられており、胎生期心臓の各領域について遺伝子の発現・機能や構成細胞の時空間的な動態を知ることは、病態の発症機序を理解するうえで重要である。本研究では、転写調節因子Hey2のノックアウト(KO)マウスを三尖弁閉鎖、右心室低形成および心室中隔欠損を併発する疾患モデルとして用いて、病態形成に対するHey2の上流-下流転写因子カスケードの役割を明らかにすることを目的としている。
心臓内の限局された領域もしくは細胞系譜に特異的なHey2コンディショナルKO(cKO)マウスと全身Hey2 KOマウスの表現型比較によって、Hey2欠失による心臓形態異常において中心的な役割を担っている領域・細胞系譜が示された。この心臓内領域における網羅的遺伝子発現解析では、細胞内シグナル分子・心筋収縮制御タンパク質・分泌因子など多様な遺伝子の発現変動が観察されたが、その中には細胞分化や増殖に関与する複数の転写因子も含まれていた。定量的PCR解析およびin situハイブリダイゼーションによって、Hey2欠失による発現変動はよく再現され、正常発生においてこれら遺伝子群が心臓内領域に特異的な発現を示すことが明らかになった。さらに心室筋においてHey2を含む複数の転写因子が構成する転写制御カスケードの一端が明らかになった。一方、これらと並行してHey2の心室筋特異的発現を制御する上流転写制御機構の解明にも取り組み、マウスとヒトにおいてHey2遺伝子の約210kb上流に存在する心室筋エンハンサーを同定した。このエンハンサーはTbx20およびGata転写因子によって活性調節を受け、CRISPR/Cas9法によるエンハンサー欠失マウスが著しいHey2発現低下を示すことから、Hey2の心室筋発現に必須の意義を有すると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回作製したHey2 cKOマウス胚の表現型解析から、Hey2発現の胎生期心臓内領域における重要性を比較検討することができた。さらに網羅的遺伝子発現解析においてHey2欠失によって発現変動を示す下流遺伝子群が明らかになったことから、心臓発生過程での心室筋Hey2制御カスケードの重要性が示唆された。またHey2遺伝子の心室筋特異的転写制御機構についてもTbx20とGataという2つの主要心臓転写因子が関与している知見を得ることができ、本研究の目的である「病態形成に対するHey2の上流-下流転写因子カスケードの役割」に関して理解を発展させることができた。現在は、同定したHey2下流の心臓特異的転写因子についてHey2制御カスケードにおける重要性を検証するため、CRISPR/Cas9ゲノム編集によってKOマウスを作製し、Hey2 KO表現型のレスキュー実験を進行させている。これらを総合的に判断すると、研究の進展は順調であると考えて良いのではないかと思われる。

今後の研究の推進方策

(1) Hey2 cKOおよびKOマウス胚心室内の各領域における細胞分裂頻度をEdU incorporation assayによって評価し、出生時に認められる三尖弁閉鎖、右心室低形成および心室中隔欠損発症との関連について検討する。
(2)Hey2 cKOマウス胚の心室筋遺伝子発現プロファイリングについてさらに包括的かつ詳細に分析する。発現変動が大きく心臓内領域特異的な発現を示している遺伝子についてはKOマウスを作製して表現型解析を進め、心臓形態形成における意義を検討する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Expression of Hey2 transcription factor in the early embryonic ventricles is controlled through a distal enhancer by Tbx20 and Gata transcription factors2020

    • 著者名/発表者名
      Ihara Dai、Watanabe Yusuke、Seya Daiki、Arai Yuji、Isomoto Yoshie、Nakano Atsushi、Kubo Atsushi、Ogura Toshihiko、Kawamura Teruhisa、Nakagawa Osamu
    • 雑誌名

      Developmental Biology

      巻: 461 ページ: 124-131

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2020.02.001.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Hey2 expression in the right ventricle and interventricular septum is essential for cardiac morphogenesis2019

    • 著者名/発表者名
      瀬谷大貴、井原大、川村晃久、渡邉裕介、中川修
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-01-27  

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