研究課題/領域番号 |
19K17320
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 裕 東北大学, 大学病院, 助教 (00789787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Holoprosencephaly / 全前脳胞症 / Binder症候群 / Binderoid cleft lip |
研究実績の概要 |
令和元年度は対象症例の収集・解析を行った。対象は年齢・性別を問わず、臨床症状として口唇顎口蓋裂・眼窩間距離の狭小化など、顔面正中部の低形成による顔貌異常を伴う症例とした。令和元年度末までに、宮城県立こども病院・八戸市立市民病院から2例の典型的なHPE症例、東北大学病院からBinderoid complete cleft lip/plateとその疑い例 17 例を同定した。その中のHPE症例2例 (ALOBAR型1例、SEMILOBAR型1例)、Binderoid complete cleft lip/plate症例1例において、患者もしくは家族よりインフォー ムドコンセントを取得し、患者本人、および両親から採血を実施した。3症例に対してG-bandingを行い、いずれも正常核型であることを確認した。続いて、既知の遺伝子変異の同定、及びHPEの発症に関わる主要なpathwayに含まれる 遺伝子の変異を同定するため、Targeted NGS panelを実施した。148の候補遺伝子のエクソン領域、およびECR browserを用いて同定した非コーディング領域のevolutionarily conseved reigion (脊椎動物において種を超えて保存されている領域)を解析領域とした。以上を含めた全975,605bp対象領域とし、Hiseq2000を用いてシークエンスした。現在、得られたデータの解析中であり、reference sequence (hg19)にマッピングしgenotypingを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の遂行にあたっては、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得た (「研究課題:次世代シークエンサーを用いた網羅的解析による全前脳胞症の遺伝子解析研究」、受付番号: 2017-1-195)。症例収集については当院および関連病院に周知し、現在までに、典型的なHPE2症例、Binderoid cleftlip/plateを含む17例が同定された。その中のHPE症例2例(ALOBAR型1例、SEMILOBAR型1例)、Binderoid complete cleft lip/plate症例1例において、患者もしくは家族よりインフォー ムドコンセントを取得し、患者本人、および両親から採血を実施した。3症例に対してG-bandingを行い、いずれも正常核型であることを確認し、148の候補遺伝子についてTargeted NGSを実施中である。当初の予定では令和元年度中に既知の遺伝子変異の同定、及びHPEの発症に関わる主要なpathwayに含まれる遺伝子の変異の同定までを想定していたが、現時点でそこまでは到達していない。本研究を遂行するにあたり、個々の症例に対する本研究参加へのインフォームドコンセントに十分な時間をあてているため、検体および臨床症状の収集に想定よりも時間を要している。今後も引き続き十分な説明を行い、インフォームドコンセントを得た上で研究を遂行する方針である。
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今後の研究の推進方策 |
収集した症例に対し、引き続き以下の順序で解析を進める。 (1) G-banding:13トリソミー・18トリソミー・三倍体など染色体の数の異常の検索のために行う。末梢血中の分裂中期(metaphase)の白血球のギムザ染色により染色体を観察する。状況に応じて、当院あるいは協力病院にて施行する。(2) CGHアレイ、MLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification):染色体の微小な欠失・重複、及びCopy Number Variantの検索のために行う。CGHアレイ解析はAgilent Technologiesの180K+SNP用の解析キットを用いて行う。 Microarray Scanner、サーマルサイクラーなどの機器は、当院当科で所有しているものを使用する。(3) Targeted NGS assay:既知の遺伝子変異の同定、及び HPEの発症に関わる主要なpathwayに含まれる148遺伝子の変異を同定する。これらのエクソン領域 (コーディング領域、UTR)に加えて、ECRbrowserを用いて同定 した非コーディング領域のevolutionarily conseved reigion(ECR:脊椎動物において種を超えて保存されている領域)を解析領域に含める。上記の解析(G-banding、CGHアレイ、MLPA、Targeted NGS assay)で原因が同定されなかった症例についてはトリオ(発端者と両親)に対し全エクソームシークエンスを施行し、未知の遺伝子変異の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究では、MLPA法で用いるサーマルサイクラーやシークエンサー(次世代シークエンサー)、CGHアレイ法に必要なスキャナーなどの大型機器は当研究室、および遺伝医療学分野研究室や東北大学医学部共同実験室にあるものを使用するため計上しない。よって必要なのは主として遺伝子解析に必要な実験試薬、 プラスチック備品、データの保存解析等に使用するPCなどである。当初令和元年度に計上していたエクソームシークエンス用のHuman エクソームキットベイト ライブラリー(16 サンプル分kit)、CGH マイクロアレイ用のCGH microarray kit(180K CGH+SNP) (10 サンプル分)、MLPA用のプローkit(100reaction)、 DNA抽出などその他の試薬代とプラスチック備品代を令和2年度に計上する。同じく、CGH アレイによる解析では1 検体の解析に約70 千円程度、次世代シークエン サーを用いた解析は1 検体の解析に約100 千円程度必要となるためそれらを令和2年度に計上する。 当院以外の病院における倫理委員会やインフォームドコンセントに関する経費、また、国内の学会や研究会に参加し、あるいは論文作成して研究についての報告を行い、更なる症例収集を行うため、旅費やその経費を必要とする。
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