研究課題
新生児急性肺障害(ALI)の病態形成には、肺血管内皮細胞の機能障害が強く関与しており、その細胞代謝は解糖、特に6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-biphosphatase 3(PFKFB3)により制御されている。我々は、新生児ALIにおける肺血管内皮細胞の恒常性維持に対するPFKFB3の関与を調べるために、新生仔マウスを用いたlipopolysaccharide(LPS)誘導性ALIモデルと、LPSを投与したヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)を用いて、薬物的PFKFB3の効果を評価した。その結果、LPSは、HPAECにおけるPFKFB3の遺伝子発現及びタンパク質レベルを増加させ、新生仔マウス肺におけるPfkfb3の遺伝子発現を増加させた。さらに、薬物的PFKFB3阻害は、新生仔マウスLPS誘導性ALIモデルの死亡率、ALIの組織学的重症度、肺血管透過性を増悪させた。また、RNA発現解析の結果、PFKFB3阻害は、LPSを投与したHPAECの細胞間接着分子、特にTight junction関連分子であるClaudin 1の遺伝子発現上昇を阻害した。以上より、新生仔マウスのLPS誘導性ALIでは、肺血管内皮細胞におけるPFKFB3発現亢進がALIに対して保護的に作用していることが明らかになった。また、炎症刺激にさらされた血管内皮では、PFKFB3発現亢進が血管透過性の維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Journal of Reproductive Immunology
巻: 143 ページ: 103263~103263
10.1016/j.jri.2020.103263