研究課題/領域番号 |
19K17331
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
植村 優 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (40814348)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ALDH1A2 |
研究実績の概要 |
現在、高リスク神経芽腫の予後改善を目指した多くのがん幹細胞研究が、国内外で活発に行なわれている。これまでの多くの研究が、神経芽腫細胞における遺伝子変異という視点から、神経芽腫の多様性を理解しようとしてきたのに対して、本研究では、神経芽腫細胞の分泌因子という視点から研究を行っている。19アイソフォームからなるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)は、最も古くから知られている汎用的ながん幹細胞マーカーであるが、個々のがん種において働くアイソフォームおよびその機能には、未だ不明な点が多い。これまでに申請者らは、神経芽腫がん幹細胞(CSC)の増殖・分化を制御し、神経芽腫患者の予後と有意に相関した発現を示すALDH1A2アイソフォームを同定している。さらに、ALDH1A2アイソフォームをノックダウンおよび過剰発現した神経芽腫BE(2)-C細胞を樹立し、ALDH1A2が神経芽腫のCSC形質をin vivo(ヌードマウス)でも制御することを示している。本研究では、ALDH1A2の作用機構の解明を目指して、ALDH1A2によって分泌を制御される分子の同定を試みている。ALDH1A2をノックダウンおよび過剰発現した神経芽腫BE(2)-C細胞の培養上清を用いて、両者の間で発現量(分泌量)の異なる分子を探索し、いくつかの候補となる分子を同定することができた。今後は、候補分子の培養した神経芽腫細胞内における発現をmRNAおよびタンパク質レベルで検討すると同時に、候補分子の細胞内局在を、間接蛍光免疫法を用いて形態学的に解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALDH1A2によって分泌を制御される分子の同定には、ALDH1A2をノックダウンおよび過剰発現した神経芽腫BE(2)-C細胞の培養上清を用いた。両者の間で発現量(分泌量)の異なる分子の同定を試みた。両者の培養上清をSDS-PAGE後、銀染色上の濃さが大きく変化したバンド群を質量分析(Mass Spectrometory)した。本年度は、いくつかの候補分子を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
候補分子の培養した神経芽腫細胞内における発現をmRNAおよびタンパク質レベルで検討していく。培養した神経芽腫細胞からRNAおよびタンパク質を抽出して、リアルタイム PCRおよびウェスタンブロットを用いて、同定した候補分子のmRNAおよびタンパク質レベルの発現を解析していく。さらに、同定した候補分子の細胞内局在を、間接蛍光免疫法を用いて形態学的に解析していく。局在の変化を検出できれば、GFP融合蛋白質を用いたライブセルイメージングによって細胞内動態を詳細に検討していく。次に、同定した候補分子を過剰発現およびノックダウンしたBE(2)-C細胞を作製し、DNA合成、細胞増殖速度、細胞運動能、軟寒天培地コロニー形成能、スフェア形成能をコントロール細胞との間でin vitroで比較検討していく。同時に、ヌードマウスを用いてin vivoでの腫瘍形成能、転移能についても検討していく。
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