研究実績の概要 |
低ホスファターゼ症(Hypophosphatasia, HPP)は、TNSALP遺伝子変異によって、骨の石灰化障害をきたす疾患で、重症例は致死的な経過をとる。酵素補充療法の開始により骨の石灰化の回復を認め一定の効果がみられているが、正常な骨構造に達しない。本研究では、HPP患者由来の間葉系幹細胞および骨芽細胞を用いて、網羅的遺伝子発現解析から幹細胞の機能や骨分化に関わる分子メカニズムを明らかにしたい。 HPP患者、HPP保因者および健常人のMSC・Ostの網羅的遺伝子発現に関して、 5,128遺伝子に関して有意な発現の差が得られた。Gene Ontology(GO)解析では、Biological process ossification, limb development, regulation of ossification, and Skeletal system morphogenesisに関与する遺伝子の発現が変化していた。KEGGを利用したパスウェイ解析では、Hypophosphatemic rickets, Congenital generalized lipodystrophy, Familial partial lipodystrophyおよびOsteogenesis imperfectaにみられるのと同じ発現パターンがみられた。さらに、GO分子機能解析では、ビタミンD結合、成長因子結合および細胞外マトリックスに関与する遺伝子発現に変化がみられた。それらのうち、特に、細胞外マトリクス、胚発生、リラキシンシグナル経路およびwntシグナル経路に関する幾つかの分子に着目して、細胞の機能や骨分化に関与するか検討している。
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