研究課題/領域番号 |
19K17337
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
小川 紫野 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (40793592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 新生児白質障害 / 低酸素虚血 / 細胞移植 / 運動機能 |
研究実績の概要 |
軽症型の脳室周囲白質軟化症(PVL)である新生児白質障害(DWMI)は、早産児において分娩児の低酸素虚血が原因でオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)が正常に分化・成熟できないために起こる。DWMIモデルラットの脳内にOPCを移植することにより、cell replacementという観点から病態の改善を目指している。DWMIモデルラットにOPCを移植し、移植後8週まで細胞の生存を確認できた。一部のOPCは成熟オリゴデンドロサイトに分化したが、成熟オリゴデンドロサイトの割合は shamと比較すると低下していた。すなわちDWMI脳内では外部から移植されたOPCも分化が抑制されていることが明らかとなった。 これまではDWMIモデル作成後2日でOPC移植を行ってきたが、これは炎症の急性期にあたるので虚血による炎症で移植細胞の生存・分化が抑制される可能性があるとの指摘をうけた。このためDWMIモデル作成からOPC移植までの期間を延長し、炎症の急性期が過ぎた時期にOPC移植を行うことで移植の効果がより高くなる可能性があると考え、DWMIモデル作成後14日目でOPC移植を行った。2日目に移植を行った場合と比較すると14日目で移植を行ったラットでは成熟オリゴデンドロサイトの割合は上昇しており炎症の急性期を過ぎてから移植を行ったほうが移植細胞の生存分化が促進されることが分かった。しかし14日目に移植を行った場合でも、shamと比較するとDWMIモデルでは成熟オリゴデンドロサイトの割合は低かった。低酸素虚血という環境がOPCの分化を抑制していると考えられるため、低酸素虚血によるOPC分化の抑制のメカニズムを明らかにし、この抑制の影響を改善できるような要因の解明が必要と考えている。 現在移植をおこなったDWMIモデルの運動機能の改善が見られるか否について検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
低酸素虚血に陥った脳内環境では外部から移植された正常なOPCも分化が抑制されることが判明したので、低酸素虚血により脳内に放出されるなんらかの因子によりOPCの分化抑制が起こっている可能性が考えられる。しかしながらこの因子の特定に難渋している。 並行してOPC移植を行ったDWMIモデルにおいて運動機能が改善されるか否かの評価を開始しているが、客観的かつ再現性のある評価方法の確率に難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
OPC移植を行ったDWMIモデルにおいて運動機能が改善されるか否かを引き続き検証する予定である。 具体的にはまず運動機能の評価方法の確立を目指している。 また、低酸素虚血の環境においてOPCの分化抑制に関わるメカニズムについてもデータを収集して、分化抑制にはたらく因子の特定を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルラットの運動機能評価に難渋しており引き続き評価方法の検討を要する。文献検索や学会での情報収集を行い評価方法を確立していく予定である。
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