研究課題/領域番号 |
19K17338
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
森元 英周 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20827539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Angiotensin1-7 / 早期の段階 / 分化促進 / Mas Receptor |
研究実績の概要 |
in vivoの実験に先立ち、不死化処理を施した前駆褐色脂肪細胞株であるCB1細胞を用いたin vitroの実験を行った。CB1細胞に対する分化誘導開始日をday0とし、day0からAngiotensin1-7(Ang1-7)や比較対象としてCL316243(選択的β3アドレナリンレセプターアゴニスト)を投与しday2、4、6、8にmRNAを抽出し薬剤無投与をコントロールとして、褐色脂肪細胞(BAT)の分化増殖に関わる蛋白であるUCP1、PRDM16PRDM16、PPARγや、Ang1-7の受容体であるMas Receptor(MasR)、交感神経刺激を介したBAT活性化の起点となるβ3アドレナリンレセプター(β3ADR)のmRNAの発現を比較した。その結果、day2とday4ではUCP1、PRDM16、PPARγの発現はCL316243投与群と比べAng1-7投与群で増加していたが、day6では差がなくなり、day8ではCL316243投与群で発現が増加していた。また、分化誘導のみ行った細胞ではMasRはday0とday2で発現が多くday4以降は発現が著減したのに対して、β3ADRの発現はday4までは非常に低くday6以降で急激に増加した。更に、BAT増殖の指標として細胞内の脂肪滴の量を調べたところ、Ang1-7投与群では早期に脂肪滴が出現し増加する傾向が確認でき、脂肪滴の量も多かった。これらのことから、BATの早期の分化促進に対して、β3-ADRを介した経路は寄与する度合いが低いと考えられ、早期の段階においてAng1-7がMasRを介する経路がBATの分化促進には重要であることがわかった。このことは、Ang1-7の投与による抗肥満効果にMasRを介したBATへの直接作用が強く関与しているという仮説を支持する重要な結果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ターゲットとする経路などを推測するための情報を得るために、当初予定していたC57BL/6Jマウスを用いた実験に先立ち、培養細胞を用いた実験を行ったために当初の予定より若干の遅れを来している。さらに、in vitroの実験において興味深く有意義な結果が得られ、それらについて実験や検討を行ったことも当初の計画からやや遅れる一因となったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroの実験にて非常に有意義なで得られた情報により今後は進捗状況は改善してくると考えられる。 今後は、培養細胞を用いた実験を更に進めAngiotensin1-7が褐色脂肪細胞を活性化する経路を調べるとともに、マウスを用いたin vivoの実験系も開始していく。その実験系においては、薬剤投与のタイミングなども考慮しながら研究を進めていく。培養細胞で得られた結果からは褐色脂肪細胞に対してAngiotensin1-7が効果を発揮する時期は細胞増殖が活発な比較的若い時期であることが推察されるため、計画にあるマウスだけでなく、比較的高齢なマウスに対するAngiotensin1-7の効果を検討することも考える。
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