研究課題/領域番号 |
19K17342
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山田 茉未子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60835601)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スプライシング / トランスクリプトーム / キメラ遺伝子 |
研究実績の概要 |
前年度の研究において、ゲノム変異のmRNAのスプライシングに及ぼす影響について網羅的な検討を行い、ゲノム変異がスプラシング異常を惹起すると共に、生成されるトランスクリプトを評価すると従来のエクソーム解析ではサイレント変異あるいはミスセンス変異として認識されていた変異が、ナンセンス変異あるいはフレームシフト変異を起こすことを解明した。この研究はこれまでがんゲノム領域では注目されていたが、小児科領域の遺伝性希少疾患の領域では検証されてこなかった内容である。 2020年度はその臨床実装を行った。HNRNPK遺伝子、PUF60遺伝子、およびJMJD1C遺伝子の変異をもつ3名の患者においてゲノム変異での評価とトランスクリプトームデータに基づく評価に乖離を認め、疾患発症機序となっていることを明らかにした。これらの患者においてはトランスクリプトーム解析なしでは診断に結びつけることが困難であり、本解析手法の有用性が示された。これらの研究報告はそれぞれ論文として分子遺伝学雑誌や米国遺伝医学雑誌にて掲載した。また、ゲノム変異によるトランスクリプトームへの影響として、がんの発症機序としては既に認識されているキメラ遺伝子形成が先天遺伝性疾患の機序としても重要であることを提唱した。ZEB2-GTDC1融合遺伝子によるMowat-Wilson症候群およびKCNK9-TRAPPC融合遺伝子によるBirk-Barel症候群の2名の患者の解析から明らかにした。本研究成果について、日本先天異常学会雑誌(英文誌)に掲載したほか、日本人類遺伝学会、日本小児遺伝学会にて口演発表を行ない報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度の成果を医療実装し、エクソーム・トランスクリプトーム解析データを用いることで確定診断に至った実例を複数症例示すことができ、さらに遺伝性疾患の新たな発症機序の解明を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
疾患原因の究明としてスプライシング異常に基づくものを検出するために、全ゲノム解析およびロングリード解析を用いた解析技術も取り入れ研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目には患者の実検体を解析することで多くの興味深いデータが得られたが、新型コロナウイルス感染症の流行により病院受診を控える患者が多くみられた。今回研究期間を延長したことで多くの患者をリクルートし診断に至る患者数を増やすことを目指す。更なる解析技術の精度向上のためにも、ロングリード解析や全ゲノム解析などの解析の外部注文費用は次年度へ持ち越す予定とした。
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