2019年度の研究において、ゲノム変異のmRNAのスプライシングに及ぼす影響について網羅的な検討を行い、ゲノム変異がスプラシング異常を惹起すると共に、生成されるトランスクリプトを評価すると従来のエクソーム解析ではサイレント変異あるいはミスセンス変異として認識されていた変異が、ナンセンス変異あるいはフレームシフト変異を起こすことを解明した。この研究はこれまでがんゲノム領域では注目されていたが、小児科領域の遺伝性希少疾患の領域では検証されてこなかった内容であった。 2020年度はその臨床実装を行った。HNRNPK遺伝子、PUF60遺伝子、およびJMJD1C遺伝子の変異をもつ3名の患者においてトランスクリプトーム解析により疾患発症機序となっていることを明らかにした。また、ゲノム変異によるトランスクリプトームへの影響として、キメラ遺伝子形成も先天遺伝性疾患の機序としても重要であることを2人の患者の報告を通じて提唱した。 2021年度はエクソーム解析およびRNA解析を用いたRNPC3遺伝子変異を持つ極度の低身長症の患者の診断を行い、内分泌学的見地からのフォローアップにつなげた。また、深部イントロン変異の影響について、WDR45遺伝子の深部イントロン変異の症例から病原性の評価を行なっている。合わせて、スプラシングの影響を予測するスコアであるSpliceAIに基づいて、どの程度診断を絞り込むことができるか、その有用性を評価し、現在その成果を取りまとめているところである。
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