研究課題/領域番号 |
19K17347
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
柴田 磨己 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (20816392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | KCNQ2遺伝子変異 / RNA-Seq / てんかん / in silicoスクリーニング |
研究実績の概要 |
本研究は、以下の3つを目標としている; 1) KCNQ2脳症患者由来の遺伝子変異を保有するKCNQ2脳症モデルマウス(KCNQ2脳症マウス)を用いてKCNQ2脳症特異的な遺伝子発現変化を同定する、2) 分子シミュレーションによって化合物データベースから治療薬候補を探索する(in silicoスクリーニング)、3) 同定されたKCNQ2脳症特異的な発現変化を指標としながらKCNQ2脳症マウスへの化合物投与実験を行い、有力なKCNQ2脳症治療薬候補を同定することを目的としている。 本年度は1)の目的のために採取した、生後8、12、16、20、32、64日にあるKCNQ2脳症マウス、および野生型マウスの海馬でmRNA-Seq解析を実施した。その結果、KCNQ2脳症マウスの海馬は、全ての日齢においてKCNQ2遺伝子の発現量が野生型マウスの海馬よりも減少することが確認された。 また、2)を目的としたin silicoスクリーニングでは、Molecular Operating Environment (MOE: 株式会社富士通九州システムズ、株式会社MOLSIS提供)ソフトウェア上で、昨年度に構築したカリウムイオンチャネルの三次元構造と化合物構造(キシダ化学株式会社データベース)とでドッキングシミュレーションを行い、脳組織で主要に発現しているKv7.2/Kv7.3チャネルに優先的に結合することが予測される化合物として、新たに10件の化合物を選出した。 また、3)を目的とした動物実験では、2)によって選出され、かつ入手可能であった化合物1件に対してKCNQ2脳症マウスへ投与実験を実施したが、既存治療薬であるレチガビンと同等の効果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、1) KCNQ2脳症モデルマウスを用いてKCNQ2脳症特異的な遺伝子発現変化を同定すること、2) 分子シミュレーションによって化合物データベースからKCNQ2脳症治療薬の候補化合物を探索すること(in silicoスクリーニング)、3) 同定されたKCNQ2脳症特異的な発現変化を指標としながらKCNQ2脳症マウスへの化合物投与実験を行い、有力なKCNQ2脳症治療薬候補を同定することを目的とし、1)ではmRNA-Seq解析、2)ではin silicoスクリーニング、3)ではKCNQ2脳症マウスを用いた動物実験を実施する計画である。前年度、および本年度において、既に1)と2)は達成されており、次年度は3)を主軸に研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、in silicoスクリーニングにて選出した化合物のうち、入手可能な化合物から順に、KCNQ2脳症モデルマウスへの投与実験を実施する。同時に発作誘発薬剤であるカイニン酸を投与し、KCNQ2脳症モデルマウスにおける発作レベルの軽減、および生存率の改善程度から、投与化合物がKCNQ2脳症治療薬候補となりうるか否かを鑑別する。
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