昨年度は、以下のことを明らかにした。 粘膜固有層から分取した3型自然リンパ球(ILC3)と樹状細胞(DC)を、Nrf2欠損(Nrf2-KO)マウス由来同士で共培養すると、野生型マウス由来同士で共培養したものより、IL-22産生は2倍程度亢進した。興味深いことに、野生型のILC3をNrf2-KOマウス由来DCと共培養しても、その産生が2倍程度のまま維持された。このDCを詳細に調べると、Nrf2-KOマウス由来DCではTNFSF15(TL1A)の発現が高いことも明らかとなった。以上のことからNrf2は、TL1A産生性DCを介してILC3のIL-22産生を制御することで腸炎改善に寄与している可能性が示唆された。 本年度は、Nrf2活性化とILC3の関係を中心に解析した。野生型マウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による腸炎誘導中にNrf2活性化剤(CDDO-Im)を投与すると、腸炎の悪化が抑制された。腸炎誘導によってNrf2-KOマウスではNkp46+ILC3が増加したが、Nrf2活性化時はこの分画の細胞が減少した。加えて、DC細胞数も減少していた。さらに、CX3CR1+ DCにおいて、TL1Aの発現が低下し、Nrf2-KOマウスと正反対の結果となった。 この一連の現象は、Rag2欠損マウス(TおよびB細胞欠損マウス)でも同様に認められ、Rag2 JAK3二重欠損(Rag2JAK3-DKO)では変化がなかったことから、Nrf2を介した腸炎制御機構には、自然免疫系、特にILC3が重要な役割を果たすことを明らかにした。
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