研究実績の概要 |
本研究では様々な小児リウマチ性疾患を背景とするマクロファージ活性化症候群(MAS)の網羅的な免疫学的解析(末梢血細胞亜群解析、末梢血単核球のmRNA microarray解析、血清抗体アレイ解析)を行うことにより、MAS病態に共通の免疫学的異常を同定し、MAS の早期診断の指標を確立するとともに、新規治療法の開 発を目指すことを本研究の目的としている。 令和2年度は、すでに冷凍保存してある血清検体の解析を前年度から継続して行い、また各疾患における結果を解析し発表した。これまでにELISA法で5種のサイトカイン値(neopterin, IL-6, IL- 18, sTNF-RI, sTNF-RII)を測定した小児リウマチ性疾患(全身型若年性特発性関節炎、川崎病、SLE、若年性皮膚筋炎)、MAS合併例で急性期とMAS合併時での結果を解析した。背景疾患により異なるパターンを呈し、各疾患によりMAS移行時に有意に上昇するサイトカインが異なることがわかった。具体的には、neopterin、IL-18、sTNF-RIIはいずれの疾患でも急性期よりMAS合併時で共通して上昇し、各疾患におけるROC解析の結果、SLEではsTNF-RI、若年性皮膚筋炎ではIL-18、川崎病と全身型若年性特発性関節炎ではsTNF-RIIがMAS合併の判断に最も有用であった。これらの結果につき報告した論文がacceptされた(Mizuta M et al. Rheumatology 2021;60:231-238)。 また、川崎病に合併するMASに関して急性期とMAS発症時の血清抗体アレイ解析を行い、MAS合併時に有意に上昇を認めたサイトカインにつきELISA法で変化を確認した。しかし抗体アレイとELISAでcompatibleな結果を得られず、症例数を今後さらに増やす必要があると判断した。
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