研究課題/領域番号 |
19K17355
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
杉原 啓一 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (40835766)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂肪酸酸化異常症 / カルニチンサイクル異常症 / 新生児マススクリーニング / アシルカルニチン分析 / 末梢血単核球 / 安定同位体標識脂肪酸 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに末梢血単核球を用いた安定同位体標識脂肪酸負荷による脂肪酸酸化能検査法を開発している。本検査では、末梢血単核球内の脂肪酸酸化の流れを直接観察することができるため、酵素障害部位をin vitroで評価でき、診断にある程度有用と考えられる。また遺伝子検査や酵素活性測定よりも比較的低侵襲であり、5~6時間で解析が完了するために迅速な治療方針決定が可能であり有用性が高いと考えられる。 本年度はVLCAD欠損症に焦点を絞り研究を行っている。VLCAD欠損症患者で血中に炭素数14の不飽和アシルカルニチン(C14:1)が増加することと基質特異性に基づく酵素機能異常との関係は未だ解明されていないことから、末梢血単核球に安定同位体標識脂肪酸を負荷して細胞内標識アシルカルニチンをモニターし、病的酵素の機能評価を試みた。末梢血単核球にd33-オレイン酸を負荷した場合、d21-C12:1/d25-C14:1比はVLCAD欠損症患者単核球と対照とで有意差が見られず、d19-C10/d21-C12:1比がVLCAD欠損症患者単核球で低下しており、両者ともVLCAD欠損症での特徴的所見を表現できなかった。これはd33-オレイン酸の分子構造の影響で細胞内に脂肪酸が十分に取り込まれなかった可能性などを考えた。現在は別の安定同位体標識脂肪酸である13C18-オレイン酸を負荷してアシルカルニチン分析を行うほか、さらに13C18-オレイン酸とd31-パルミチン酸、または13C16-パルミチン酸など複数の脂肪酸を同時に負荷してアシルカルニチン分析を行い、脂肪酸代謝・酸化能についての検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸酸化能検査においては、これまでに得られたデータを解析して国内学会で発表を行っている。今後さらに検討を重ね、有用な診断マーカーの確立を目指す。 またVLCAD欠損症における変異ACADVL遺伝子、CPT2欠損症における変異CPT2遺伝子それぞれに対して遺伝子導入細胞を用いた機能解析検査を行うことを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、新規患者において本検査を施行しデータを収集する。VLCAD欠損症、ならびにCPT2欠損症はそれぞれが大変まれな希少疾患であるために患者の取集には工夫を要する。所属施設の小児科代謝検査部門において先天代謝異常検査(アシルカルニチン分析・アミノ酸分析・有機酸分析)を行っており、本疾患群の生化学診断が確定した患者においては主治医に案内し、検査に協力いただくよう依頼している。また、これまでと同様に共同研究者と情報共有を行っていく。 VLCAD欠損症やCPT2欠損症において、変異遺伝子の機能解析結果との関係性を解析することで脂肪酸酸化異常症の重症度判定を、また培養液中にベザフィブラートやレスベラトロールなどを添加することで薬物治療についての患者毎の有効性判定をそれぞれ行う方法の確立を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用が当初の予定より少なかったため。次年度、消耗品・試薬の購入に使用予定である。
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