我々はこれまでに末梢血単核球を用いた安定同位体標識脂肪酸負荷による脂肪酸酸化能検査法を開発している。本検査では、末梢血単核球の脂肪酸酸化の流れを直接観察することができるため、酵素障害部位をin vitroで評価でき、診断にある程度有用と考えられる。また遺伝子検査や酵素活性測定よりも比較的低侵襲であり、5~6時間で解析が完了するために迅速な治療方針決定が可能であり有用性が高いと考えられる。 本年度はVLCAD欠損症に焦点を絞り研究を行っている。患者及び健常者の末梢血から採取した単核球に炭素13標識のオレイン酸、ステアリン酸をそれぞれ負荷して脂肪酸酸化能検査を行った。疾患特異的なC14:1ならびにC14の上昇を反映し、患者群で13C-C12:1/13C-C14:1比や13C-C12/13C-C14比の有意な低下を認めた。総合的な脂肪酸酸化能を反映すると考えられる13C-C2/13C-C18:1比、13C-C2/13C-C18比は、両者とも患者群で有意な低下を認めた。また、上記の各比と臨床重症度の相関について検討したところ有意な相関関係が見い出せた。さらに、13C-ステアリン酸負荷検査において13C-C16/13C-C18比が13C-C14/13C-C18比より高い患者はCSSが有意に高く、より重症であると示唆された。以上から、本検査法がVLCAD欠損症の臨床的重症度を予測する上で有用であり、重症化リスクを有する患者の同定に使用できることが示唆された。
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