研究課題
研究対象家系が1家系追加され、前年度からあわせて合計3家系(いずれも常染色体優性遺伝、心中隔欠損)で全エクソーム解析を行った。1家系目。6人に中隔欠損が認められた。全エクソーム解析でABL1(NM_007313)の新規変異c.1522A>C(p.I508L)を発見した(2019年度報告書では論文発表前のため「遺伝子X」と記載)。HEK293細胞を用いた強制発現実験で機能獲得型変異であることを証明し、さらにリン酸化プロテオーム解析で、変異群でUFD1のリン酸化が有意に亢進することを示した。ABL1の機能獲得型変異による先天性心疾患を呈する症候群は、数報の既報が存在するものの、その発症メカニズムについては全く知られていなかった。UFD1は22q11.2欠失症候群の先天性心疾患の発症に関与することが知られている分子であるが、ABL1の機能獲得型変異における心臓表現型が22q11.2欠失症候群と共通点が多い点から、両疾患に共通する発生メカニズムが存在する可能性があると論文報告した。本症候群の心臓発生メカニズムについて世界で初めて検討した報告である。2家系目。4人に中隔欠損が認められた。全エクソーム解析により候補遺伝子が8つに絞られた。そのうちのTBX20の変異では先天性心疾患を発症することが報告されていた。本家系における変異は連続する9塩基の欠失であり、サンガーシーケンスで全メンバーの遺伝子型と表現型が合致することを確認した。本家系の欠失は、過去に報告されていない新規欠失であった。米国臨床遺伝・ゲノム学会の分類では"likely pathogenic"であり、原因遺伝子と判断した。論文投稿中。3家系目。8人に中隔欠損が認められた。全エクソーム解析を行い、上記と同様に解析し、心疾患の原因遺伝子として知られている遺伝子Yの新規ミスセンス変異を認めた。機能解析実験を計画中。
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International Journal of Cardiology
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