研究課題
本年度は主に、FGR児の生下時血清の酸化ストレスおよび抗酸化力の測定に取り組み、サンプル数を増やした。生下時の酸化ストレスおよび抗酸化力の測定については、2017年3月~2018年12月の期間に当院で出生した、出生体重が在胎週数相当の-2SD未満のFGR児28例およびAGA児31例の生下時残余血清を用い、FREE Carrio Duo(WISMERLL)により、酸化ストレス(d-ROM; derivative of reactive oxidative metabolites)、抗酸化力(BAP; biological anti-oxidant potential)を測定し、比較検討した。また、回帰分析を行い、FGR児とAGA児において、d-ROMおよびBAPと出生体重SD値を比較した。結果は、患者背景は、出生体重、出生体重SD値、頭囲、身長がFGR児がAGA児と比較して有意に低かったが、母体背景、在胎週数、出生時血液ガス値に有意差はなかった。FGR児とAGA児の比較では、BAPに差を認めなかったものの、FGR児においてd-ROMおよびd-ROM/BAP比が有意に高かった。更に、FGR児において、出生体重SD値とd-ROMおよびd-ROM/BAP比は逆相関関係を認めた。以上より、FGR児はAGA児と比較して、生下時に強い酸化ストレス状態にあると考えた。更に、FGR児において、胎児発育遅延の重症度と生下時の酸化ストレスのレベルには有意な関係性があると考えた。FGR児の胎盤サンプルの収集については、現在までに、在胎週数相当の出生体重-2SD未満の重症FGR児31例(平均在胎週数34.4週、平均出生体重1536.8g、男児14例、女児18例)の胎盤を収集し、-70℃の状態で冷凍保存している。
3: やや遅れている
平成31~令和3年に予定していた、FGR児とAGA児の酸化ストレス測定および臨床データの収集は終了しているが、胎盤サンプル数が目標症例数である40例には到達していないため。
今後は、胎盤サンプルが目標症例数(40例)に達した段階で、DNA抽出を行い、遺伝子プロモーター領域の網羅的なDNAメチル化解析およびFGR児とAGA児におけるDNAメチル化率の比較検討などの遺伝学的解析を行う。加えて、胎盤サンプルの酸化ストレスおよび抗酸化力を測定し、胎盤のDNAメチル化データと酸化ストレス状態の関連についても検討を行う予定である。
胎盤サンプル数が目標症例数である40例に達した段階で、胎盤サンプルからDNAを一括して抽出する予定であったが、本年度は胎盤サンプル数が目標症例数に到達しなかったため、DNA抽出が施行できず、次年度使用額が発生した。胎盤サンプルが目標数に到達次第、DNAの一括抽出を施行予定である。
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Pediatrics & Neonatology
巻: 61 ページ: 548~550
10.1016/j.pedneo.2020.07.011
巻: 61 ページ: 665~666
10.1016/j.pedneo.2020.07.003