小児がん死亡の約15%を占める神経芽腫は、臨床的多様性によって特徴付けられ、Stage4患者の50%以上が再発する一方で、Stage4S患者では転移があっても自然消退し得ることが知られている。Stage4S患者の分子病態は未だ不明な点が多いが、神経芽腫細胞とそれらを取り巻くがん微小環境との相互作用が深く関わることが予想される。これまでの多くの研究がStage4S患者におけるゲノム異常に注目していたのに対して、本研究では、Stage4S患者の染色体転座部位から単離されたEvi5遺伝子に注目する。Evi5は、エンドソーム内に局在するRab11を不活化し、細胞膜とエンドソームの間のリサイクリングを制御すると報告されたが、神経芽腫における役割に関する報告は認められない。そこで本研究では、Evi5が制御する神経芽腫細胞からの分泌因子を同定し、神経芽腫のがん微小環境におけるEvi5の役割を明らかにすることを目指している。これまでに申請者らは、Evi5をノックダウンすると神経芽腫の進展が抑えられることを明らかにし、Evi5をノックダウンおよび過剰発現した神経芽腫BE(2)-C細胞の培養上清の間で発現量(分泌量)が大きく異なる分子群をEvi5に制御される分泌因子の候補分子群として同定してきた。本年度は、Evi5に制御される分泌因子の候補分子群が、神経芽腫BE(2)-C細胞およびがん微小環境の主要な構成成分である間葉系幹細胞(MSC)の細胞増殖におよぼす効果を検討した。今後は、BE(2)-C細胞とMSCの共培養系を用いて神経芽腫のがん微小環境におけるEvi5の役割を明らかにしていく。
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