研究課題/領域番号 |
19K17363
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
三浦 章子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (20749832)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新生児黄疸 / 体質性黄疸 / UGT1A1遺伝子異常 |
研究実績の概要 |
体質性黄疸は非抱合型ビリルビンから抱合型ビリルビンに変換するUDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)をコードする遺伝子に変異が入ることによって発症する。近年、我々はUGT1A1遺伝子に変異を持つGunn ratにおいて統合失調症に類似した行動障害を報告した(Hayashida 2009, Tsuchie 2013, Liaury 2014)。また、薬理学的研究で、この行動異常の一つであるオープンフィールドテストにおける過活動に対して、ハロペリドールよりもリスペリドンが奏功するということが示された(Tsuchie 2013)。リスペリドンはD2遮断作用に加えて、5HT2ARのアンタゴニスト作用をもっており、5HT2ARのほうに20倍強く結合する。このことから、Gunn ratにはセロトニン伝達異常があるのではないかと予想した。 そこで、本研究ではGunn rat のセロトニン神経に注目し解析を行った。 その結果、5HT2A/C受容体アンタゴニストによってオープンフィールドテストにおける過活動が改善することを発見した。さらにセロトニン伝達機能を解析した結果、縫線核から前頭葉へのセロトニン伝達が過剰になっていることが明らかになった。今回の研究でUGT1A1遺伝子異常をもつラットの行動異常の原因の一つとしてセロトニン伝達異常の存在が示され、これら行動異常に対して5HT2A/C受容体アンタゴニストが奏功することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生児核黄疸ならびに体質性黄疸のモデルラットであるGunn ratのセロトニン伝達異常について、前頭葉や縫線核における免疫染色による評価、各種セロトニン受容体アンタゴニストによる治療効果(過活動という行動異常を改善しうるかどうか)、などについて実験を予定通り進めており、その成果を各種学会で発表している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに、他のセロトニンレセプターを選択的にブロックすることで行動異常が改善するかを評価し、前臨床的な検討をすすめる。Gunn ratは希少であるが、業者よりスムーズに持続的に購入できており、計画遂行にあたって今のところ問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費や謝金が生じなかったこと、および実験がスムーズに進んだため物品費が計画よりも少なくて済んだことなどが主な理由である。今後も実験計画にそって実験をすすめる予定であり、また現在論文作成も並行して行っているため、物品費や論文作成費、旅費などで使用する予定である。
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