研究実績の概要 |
精神疾患はストレス、免疫異常、代謝異常、遺伝子異常など様々な要因によって引き起こされると考えられている。疫学研究によって新生児期の遺伝的若しくはその他の原因によるビリルビン代謝障害(新生児黄疸)によって起こる脳神経機能症障害(ビリルビン脳症)もまた、精神疾患発症リスクを増大させることが報告されている(Dalman 1999, Maimburg 2008, Wei 2015, Miyaoka 2000, Amin 2019)。 近年、軽度のビリルビン脳症であっても、注意欠陥多動症(ADHD)や統合失調症の発症リスクになることが報告され、Bilirubin Induced Neurological Dysfunction: BINDという新たな疾患概念が提唱さている(Shapiro 2005)。しかしながら、BINDの脳病態が詳しく解っていないため治療法が確立していない。 今回、BINDモデル動物(Gunn rat)の脳内においてセロトニン神経伝達が過剰になっていることを明らかにした。更に、セロトニン伝達の阻害作用をもつ高血圧治療薬(ケタンセリン)を低濃度皮下に投与することでモデルラット特有の行動障害を改善させることが出来ることを発見した。本研究成果を2021年3月31日 にNature Publishing Groupが発行する小児科専門誌Pediatric research (online) で発表した。
◆掲載論文 Normalizing hyperactivity of the Gunn rat with bilirubin-induced neurological disorders via Ketanserin. Pediatric research (https://www.nature.com/articles/s41390-021-01446-1)
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