研究実績の概要 |
新生児核黄疸にまで至らない程度の中程度の新生児黄疸であっても、後年の神経精神医学的問題を引き起こす可能性が様々な大規模疫学調査で示されている。特にADHDについて発症リスクが増加するという報告が多い。先天性高ビリルビン血症を呈し、新生児黄疸のモデルラットとして確立しているGunn ratにおいても、オープンフィールドテストにおける総行動量の増加、つまり多動、が認められている。このGunn ratの多動に着目し研究をすすめた。 前年度までの研究で、当該モデルラットでは前頭葉におけるセロトニン伝達異常が認められ、セロトニン2A受容体アンタゴニストであるケタンセリン投与によって、多動が改善することが示された。(Miura S, Oh-Nishi A, et al. Normalizing hyperactivity of the Gunn rat with bilirubin-induced neurological disorders via ketanserin.;Pediatric research. 2021)今年度はセロトニン2A受容体アンタゴニストであるケタンセリン以外のセロトニン伝達に影響する化合物に関して検討を行った。その結果、ケタンセリン以外にもGunn ratの行動異常である多動を改善しうる化合物が示された。この結果は、新生児黄疸を背景にもつADHD治療薬について新たな提言となりうるものであり、臨床的に有用と考えられる。今年度はこの成果について論文化する予定である。
|