研究課題
プラダーウィリー症候群は、新生児期の筋緊張低下および哺乳障害、幼児期からの過食と肥満、発達遅延、低身長、性腺機能不全などを特徴とする症候群であり2015年2月に指定難病に加えられた。過食はプラダーウィリー症候群の主要な症状で、その原因は満腹中枢の障害に起因すると推測されている。また基礎代謝が低く、運動能力も低いことから、体重は増加の一途をたどり、20歳頃から糖尿病の合併率が高くなる。過度の肥満は睡眠時無呼吸症候群や高血圧、動脈硬化等の症状も引き起こす。プラダーウィリー症候群は年齢とともに病像が変化するのも特徴の一つであり、学童期になると執拗さ、頑固さ、こだわりや思い込みが強くなり、周囲とのトラブルが多くなる。かんしゃく等の感情の爆発がみられることもあり、性格や行動の問題が年齢とともに強くなる。以上のことからプラダーウィリー症候群の管理は小児期から学童期、成人期に必要となるが現在の日本では成人例も含め小児科での管理がほとんどであり問題となっている。そのため当研究ではプラダーウィリー症候群のトランジションを主な研究対象としている。トランジションが困難な理由として、その多彩な合併症が挙げられる。様々な内分泌学的合併症があり、具体的には高度肥満による糖尿病や睡眠時無呼吸症候群、性腺機能低下症に伴う骨密度の低下がある。また下垂体機能低下症の合併症に関しても不明なことが多い。そこで今回の研究では、プラダーウィリー症候群の甲状腺機能について研究、発表を行い2019年に論文化することができた。また、成長ホルモン治療における骨密度の影響についてIPWSOという国際学会で海外発表を行い、論文化した。プラダーウィリー症候群の管理困難な理由として糖尿病の管理が困難であり、現在の日本のプラダーウィリー症候群患者の糖尿病の現状や精神疾患の関わりなどに関し、2021年に学会発表を行い、論文化をした。
2: おおむね順調に進展している
理由研究実績の概要で述べたように当研究ではプラダーウィリー症候群のトランジションを主な研究対象としている。成人期以降の管理の要点として、成長ホルモン治療や性腺ホルモン補充療法が挙げられる。現在、日本ではプラダーウィリー症候群の成人における成長ホルモン治療は認められておらず、成人成長ホルモン分泌不全症に適応は限られるが、昨年より成長ホルモン治療の治験が始まった。今後の症例の蓄積が必要と考えられる。性腺ホルモン補充療法に関して、その治療意義である骨密度の評価に関してはIPWSOという国際学会で発表を行い、論文化した。また、プラダーウィリー症候群の管理困難な理由として糖尿病の管理が困難であり、現在の日本のプラダーウィリー症候群患者の糖尿病の現状や精神疾患の関わりなどに関し、2021年に学会発表を行い、論文化をした。
トランジションが困難な理由として、合併症の管理が困難であることが挙げられる。しかしながら、合併症に関し海外データはあるが日本人プラダーウィリー症候群データは少ない。そこで今回の研究ではその合併症の機序や頻度、その治療などの現状を一つ一つ明らかにし、小児科医のみならず精神科医、循環器内科医、呼吸器内科医、糖尿病内分泌内科医、整形外科医と様々な診療科でプラダーウィリー症候群の診療を行えるような環境調整を行えるシステム構築を目指していく。
コロナ禍で計画していた検査や日本国内や海外での国際学会における発表などが不可能になってしまったため次年度使用額が生じた。今後の研究ではこれまでに実現できなかった検査や国際学会における発表を進め論文作成を進めていく方針。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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