研究課題/領域番号 |
19K17382
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
大澤 麻登里 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 小児科学, 助教 (40792180)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNM1-L / ミトコンドリア / 心筋症 / 心不全 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
DNM1-L(Dynamin-1-like protein) はミトコンドリアの分裂とマイトファジーに関連すると言われ、DNM1-Lに相同するDrp1 (Dynamin-related protein 1)ノックアウトマウスにおいて心筋症を発症することが報告されている。しかし発症機序については不明な点が多く、ヒト心筋細胞を用いた既報告はない。本研究の目的は、DNM1-L 変異を有するヒト疾患iPS細胞を樹立し、心筋細胞へ分化させ、ミトコンドリア形態ならびにミトコンドリア機能評価、分化心筋細胞の機能解析を行うことで、1)DNM1-L変異に伴う異常ミトコンドリアの増加が心筋症・心不全の原因となっていること、2)ミトコンドリア分裂異常・マイトファジー異常を改善させ、異常ミトコンドリアを適切に処理することが心筋症・心不全の改善につながることを明らかにし、これによりミトコンドリア心筋症の発症機序を解明することである。 当該年度においては、DNM1-L変異により心筋症を発症した2名の患者からそれぞれiPS細胞を樹立し、iPS細胞を心筋細胞へ分化させ、高い純度の心筋細胞を得た。そして、疾患由来分化心筋細胞では、著しく伸長した管状のミトコンドリア形態を呈すること確認した。そして、ミトコンドリア膜電位プローブを用いることで、ミトコンドリア膜電位がコントロールと比較して低下していることを示した。さらに高分解能ミトコンドリア酸素活性/細胞代謝エネルギー分析装置を用いて、OCR(Oxygen Consumption Rate: 酸素消費速度)の低下を確認した。これらにより、疾患由来分化心筋細胞での異常ミトコンドリアの蓄積とミトコンドリア機能異常を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、iPS細胞からの心筋細胞の分化誘導と、ミトコンドリア形態異常・機能異常の有無の確認を目標としていたが、いずれの実験も実施することができた。iPS細胞から心筋細胞への分化誘導が困難になることを想定していたが、疾患・コントロール群ともに比較的短期間で分化誘導に成功し、実験を進められたことが要因と考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該度は分化心筋細胞のミトコンドリア形態異常・機能異常の評価に焦点を当てた実験を遂行した。次年度は、分化心筋細胞の収縮能・拡張能の確認、マイトファジー異常の確認を進めていく。更に、疾患iPS細胞のゲノム編集を行い、DNM1-L変異の正常化にて、分化心筋細胞におけるミトコンドリア障害と心筋機能障害ならびにマイトファジーの正常化、またコントロールへの変異導入にてこれらの病態の再現を確認することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の物品のメーカー、試薬の種類を慎重に検討していたため、次年度使用額が出てしまったが、これらの予算として次年度支出として企てる予定である。
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