研究課題/領域番号 |
19K17383
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
土田 奈々枝 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, リサーチアソシエイト (60817245)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胎盤 / iPS細胞 / トロホブラスト |
研究実績の概要 |
ヒト受精卵の着床から胎盤形成までの正常な発生過程と、その異常によって引き起こされる種々の周産期疾患に関しては、有用な実験モデルがない。モデルとして胎盤発生の観点から動物間での種差が大きいこと、ヒト組織を扱うには倫理的問題などから特に胎盤発生初期過程では未だ詳細な解明が進んでいない。我々は、異種成分不含(ゼノフリー)条件下でヒトiPS細胞をトロホブラストへと分化させる新たな培養モデルを構築した。本研究では、その分化細胞の網羅的遺伝子発現解析によって得られた2つの新規胎盤関連遺伝子のそれらの胎盤発生における機能の解明を目指す。複数のヒトiPS細胞を用いた胎盤分化誘導系において、胎盤組織マーカーであるKRT7陽性細胞群を抽出し特異的高発現遺伝子として選別したXAGE2とCNQ2遺伝子のタンパク質レベルでの発現を検証した。初期胎盤組織ではサイトトロホブラストでの発現が認められた。興味深いことにXAGE2遺伝子と共発現すると報告されたPLAC1遺伝子、炎症反応や免疫寛容に寄与すると報告された。今後は、妊娠成立と免疫寛容獲得機序の解明に向けPLAC1等の関連からも解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胎盤初期発生モデルの安定的なバイオモデルを構築した。その系をベースに見いだした2つの遺伝子のうちXAGE2遺伝子は免疫寛容にも関わるPLAC1遺伝子との関連性が示唆されることから、機能性を解明する糸口が得られた。胎盤分化系でより組織の高次化した胎盤分化誘導体を得て、機能性評価まで可能となるように3D化胎盤分化誘導系を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現ノックダウン、またはゲノム編集等を応用し機能性解析も検討していく。我々のプロトコールを用いてトロホブラストへと分化させる。まず、トロホブラストへの分化そのものにcriticalな影響を与える遺伝子かどうかを確認する。次に、細胞死などを起こさずに分化した場合は、細胞の形態や分化効率、胎盤関連遺伝子の発現、ホルモン分泌などについて広く解析し、コントロールとの比較からこれらの遺伝子の機能を推定する。
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