ヒト受精卵の着床から胎盤形成までの正常な発生過程と、その異常によって引き起こされる種々の周産期疾患に関しては、有用な実験モデルがない。モデルとして胎盤発生の観点から動物間での種差が大きいこと、ヒト組織を扱うには倫理的問題などから特に胎盤発生初期過程では未だ詳細な解明が進んでいない。我々は、異種成分不含(ゼノフリー)条件下でヒトiPS細胞をトロホブラストへと分化させる新たな培養モデルを構築した。本研究では、その分化細胞の網羅的遺伝子発現解析によって得られた2つの新規胎盤関連遺伝子のそれらの胎盤発生における機能の解明を目指す。複数のヒトiPS細胞を用いた胎盤分化誘導系において、胎盤組織マーカーであるKRT7陽性細胞群を抽出し特異的高発現遺伝子として選別したXAGE2とCNQ2遺伝子のタンパク質レベルでの発現を検証した。初期胎盤組織ではサイトトロホブラストでの発現が認められた。興味深いことにXAGE2遺伝子と共発現すると報告されたPLAC1遺伝子、炎症反応や免疫寛容に寄与すると報告された。今後は、妊娠成立と免疫寛容獲得機序の解明に向けPLAC1等の関連からも解析を進めていく。
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