減量によって大幅に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が改善する症例、改善が乏しい症例が存在するため、BMI以外の因子が肥満合併症に関与することが示唆される。NASHには単純性脂肪肝と同様に肝脂肪化が見られるが、単純性脂肪肝に見られない肝線維化や肝細胞ダメージが進行することが問題となっている。肥満との関連性が指摘されている腸内細菌叢に注目し、肥満外科治療(内視鏡下胃内バルーン留置術とスリーブ状胃切除術)前と6ヶ月後で腸内細菌叢の変化を経時的に評価し検討した。その結果、肥満治療後に腸内細菌叢は大きく変化することが分かり、22の細菌分類の割合が有意に変化していた。しかし、この結果からは、肥満治療の結果として細菌が変化しただけなのか、細菌が悪影響を及ぼす原因なのかについては解釈できない。そこでマウスに肥満治療前便を移植したA群と、治療後便を移植したB群を作成し高脂肪食を与えて比較した。体重増加に有意差はなかったものの、肝RNAを抽出し、real-time PCRを施行したところ、ccl2(肝での炎症)、col1a1(線維化)の発現が治療前の便を移植したA群で有意に増加した。このことから、肥満者の腸内細菌叢が、体重増加(肥満)とは独立して肝の炎症と線維化を悪化させる役割を担っている可能性があるという仮説が立てられた。肥満治療前の細菌に着目すると、治療後に比べてEscherichia coli(E. coli)が多く、治療後には15例中全例で明らかに減少したことが分かった。以上の結果から、肥満者のもつ病的な腸内細菌がNASHのおける肝線維化や炎症を増悪させていることが推測された。
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