研究課題
膵星細胞は膵臓での慢性炎症に伴い活性化し、レチノイド(ビタミンA)を含んだ脂肪滴を徐々に失うとともに、サイトカインやコラーゲン等を産生し膵線維化に深く関わっている。膵癌やその発生母地と考えられる慢性膵炎は膵線維化を病理学的特徴としており、膵星細胞はそれらの病態進展において中心的役割を果たすと考えられている。申請者らは、膵貯蔵レチノイドが膵臓の病態に及ぼす影響について遺伝子改変マウスを用いた実験を行った。その中で、レチニルエステル合成酵素(LRAT)欠損マウスの膵レチノイド貯蔵について解析し、モデルとしての有用性を検証するとともに、セルレイン反復投与による慢性膵炎・膵線維化モデルにおける野生型との差異について解析した。高速液体クロマトグラフィーによる貯蔵レチノイドの測定では、肝臓での実験結果から想定された通り、LRAT欠損マウスでは対照マウスと比較して膵貯蔵レチノイドが有意に減少していることが確認された。セルレイン反復注射による慢性膵炎、膵線維化モデルにおいて、血清アミラーゼおよびリパーゼはLRAT欠損群で有意に高値であった。また、膵組織像の解析においてLRAT欠損マウスでは膵炎の増悪と線維組織の有意な増生がみられたほか、膵におけるmRNAの比較では、線維化マーカーであるTimp1がLRAT欠損群において有意に発現が高値であった。上記実験結果より、LRATの欠損により慢性膵炎、膵線維化が増悪することが示唆され、膵組織におけるレチノイド量の差異が、膵の病態に影響を与える可能性が示された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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