研究実績の概要 |
クローン病(Crohn's disease: CD)は原因不明の慢性炎症を来す炎症性腸疾患である。本疾患は慢性炎症の結果、腸管に線維化を生じ狭窄を来すことがあり、その病態にはコラーゲンの産生亢進が関与しているとされている。我々はこのコラーゲン産生に必須の分子であるheat shock protein(HSP)47を介したコラーゲン産生が腸管線維化に関与していることを報告してきた。現在まで複数のサイトカインの環境(IL-1β, IL-17A, IL-1β,TNF-α, TGF-β1)にてHSP47およびコラーゲンの産生が亢進することを確認した。また、患者背景ではCD腸管狭窄症例では家族性地中海熱の疾患感受性遺伝子であるMediterranean fever (MEFV)遺伝子に複数のSNPが確認され、特にE148QにSNPを有する症例が多いことを明らかとした。この結果を踏まえ、同SNPを有するCD患者より単離した末梢血単核細胞における検討を行い、インフラマソームと呼ばれる蛋白複合体の活性化およびIL-1βの発現亢進を確認した。ヒト筋線維芽細胞株(CCD-18Co)に対するIL-1β刺激では単刺激に加えて、各種サイトカインとの共刺激にてHSP47、コラーゲンの発現亢進を認めたことから、インフラマソームとCD狭窄とのさらなる検討を腸管組織にて行った。具体的には腸管局所での関与についてE148QSNPを有するCD症例の手術検体を用いて腸管炎症部位におけるCaspase-ⅠおよびIL-1βの免疫染色を行い、病変部位におけるインフラマソームの活性化およびIL-1βの発現亢進を確認した。これら結果よりインフラマソームを介したIL-1βが、CDの炎症環境における炎症性サイトカインの相互の影響により、腸管における線維化が進行し、腸管狭窄へと至る可能性が示唆された。
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