研究課題/領域番号 |
19K17399
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
近藤 星 岡山大学, 大学病院, 医員 (90834838)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | UCA1 / メトホルミン / ドラッグリポジショニング / 線維化 / CCN2/CTGF / 非コードRNA / CRISPR/Cas9 / ssODN |
研究実績の概要 |
線維化は、全身の様々な臓器や組織に共通してみられる組織中の結合組織が異常増殖する現象であり、その進行により肝硬変・肝炎や心不全、慢性腎臓病など、多くの線維化関連疾患を引き起こす。これらの疾患の治療のため、線維化の詳しいメカニズム解明とその制御が急がれている。本研究では、糖尿病治療薬メトホルミンの新たな抗線維化薬としての可能性(ドラッグリポジショニング)と、長鎖非コードRNA(UCA1)を介した線維化のメカニズムの解明を目的とした。本年度では、in vivoでのUCA1を介したメトホルミンの抗線維化作用の検証に必須となるUCA1 ノックイン(KI)マウスの作製とその系統確立に重点を置いて研究を推進した。約6 kbのUCA1一本鎖DNA(ssODN)を作製し、CRISPR/Cas9システムを用いてこのssODNをエレクトロポレーションによりマウス受精卵へ導入するという手法でKIマウスを作製した。得られたUCA1 KIマウスを用いて系統確立や形質の解析を行う予定であったが、動物実験施設の統廃合と施設移転が重なり、KIマウスの胚のみ保管が許可される事態となった。保存できた胚の状態も良好とはいえず、新施設へ移転してから再度、UCA1 KIマウスの作製に着手した。その結果、全長ssODNがKIされたマウスを再度得ることができ、in vivoでの検証に必要なモデル動物の準備が整った。現在、UCA1 KIマウスの形質の解析を進めている。また、培養細胞でのUCA1を介したメトホルミンの抗線維化作用の検証については、UCA1 KIマウスの作製が難航したため、メトホルミンの作用・培養条件の探索の段階にとどまっているが、今後進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究実施計画では、UCA1 KIマウスの作製とその形質の解析を行ったのち、KIマウスを用いた線維化疾患誘発モデルの作製まで行う予定であった。しかし、動物実験施設の統廃合と施設移転により、得られたUCA1 KIマウスの胚のみ保管が許可されるという事態となり、保存できた胚の状態も良好とはいえず、新施設へ移転してから再度のUCA1 KIマウスの作製を余儀無くされた。UCA1 KIマウスの作製に当初予測していた以上の時間を要したため、線維化疾患誘発モデルの作製にはいたらず、培養細胞でのUCA1を介したメトホルミンの抗線維化作用の検証についても、メトホルミンの作用・培養条件の探索の段階にとどまることとなった。これらの点を考慮し、2019年度の研究進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度にあまり進められなかった培養細胞でのUCA1を介したメトホルミンの抗線維化作用の検証を急ぐとともに、UCA1 KIマウスの形質の解析が終わり次第、線維化疾患誘発モデルの作製に着手する。UCA1は癌にも関連するため、このKIマウスは系統確立困難が予想される。確立に時間がかかる場合は1世代で実験を行う。ヒトおよびマウスの線維芽細胞において、メトホルミン投与により線維化が回復するか、また、メトホルミンの影響の無い条件下でUCA1自身が線維化に関与するか、発現遺伝子・タンパク・線維芽細胞の増殖を解析して評価する。作製した線維化疾患誘発モデルにメトホルミンを投与し、その抗線維化作用について組織学的解析や分子生化学的解析を行って検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度はUCA1 KIマウス作製の難航により、線維化疾患誘発モデルマウスの作製に到らず、培養細胞でのメトホルミンの抗線維化作用およびUCA1の線維化への関与の検証も大部分は年度内に進めることが困難であったため、次年度使用額が生じた。2020年度では、次年度使用額と当該年度に請求する助成金を合わせて、UCA1を介したメトホルミンの抗線維化作用について、培養細胞での検証と同時に、線維化疾患誘発モデルマウスの作製およびそれを用いたin vivoでの検証を行う。また、本研究課題を通して得られた研究成果を学会発表し、学術論文として発表する予定である。
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