研究実績の概要 |
本研究の目的は、糖尿病治療薬メトホルミン(Met)による抗線維化効果を検証し、Cellular Communication Network factor 2 (CCN2)および霊長類特異的非コードRNA であるUCA1が関与するかを明らかにすることであった。 研究最終年度はCCN2を高発現するヒト軟骨肉腫由来HCS-2/8細胞を用い以下の結果を得た。 ①1~50 mMのMet添加によって、添加48時間後から濃度依存的に有意な細胞増殖の抑制が観察されたが、使用したいずれの濃度にも細胞障害性は観察されなかった。②HCS-2/8細胞にMet 5 mMを添加すると、非添加群に比べ48, 72 時間後にUCA1 mRNAの発現が増加した。Sox9, Aggrecan, COL2A1 mRNA, miRNA-18a, miRNA-26aの発現もMet添加群で増加した。一方、CCN2の発現は48, 72 時間でやや低下した。③UCA1 siRNAを用いてUCA1をノックダウンしたHCS-2/8細胞にMet 5 mMを添加し、遺伝子発現の経時的な変化を解析した。UCA1mRNAレベルは、UCA1siRNA群およびコントロール群ともに24 時間後ではMet添加による差は見られなかったが、48時間後ではコントロール群におけるMet添加によるUCA1 mRNAの上昇が、UCA1ノックダウン細胞では低く抑えられていた。④CCN2 mRNAの発現はUCA1ノックダウンにより48時間後に上昇し、Met添加によっても非添加群より高かった。一方で、miRNA-26aはUCA1ノックダウンにより48時間後にその発現レベルは低く、Met添加によっても発現レベルは上昇しなかった。 これらの結果より、Metは軟骨細胞で少なくとも部分的にUCA1の誘導を介してCCN2の発現抑制を行うこと、また、UCA1の誘導はmiRNA-26aの誘導を伴い、miRNA-26aがCCN2の発現調節を行なっている報告があることからもmiRNA-26aを介するCCN2の発現調節機構の存在が示唆された。
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