研究課題/領域番号 |
19K17402
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤森 尚 九州大学, 大学病院, 助教 (60808137)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / liquid biopsy / cell-free DNA / 膵神経内分泌腫瘍 / 網羅的解析 |
研究実績の概要 |
本研究は膵癌患者の末梢血中のcell-free DNAを前向きに追跡することで、liquid biopsyの有用性を評価することを主な目的とする。実際には患者サンプルの取得に始まり、血漿からのcell-free DNA抽出、ライブラリー作成と網羅的遺伝子発現解析、更に診断時の組織サンプル(EUS-FNA検体や外科切除検体)との遺伝子発現の比較を患者毎に経時的に行う研究計画である。尚、我々は膵癌以外で膵に発生する代表的な悪性腫瘍である膵神経内分泌腫瘍(PNET)に対して、組織検体から遺伝子発現を評価する実験体系を確立している。 本年度は、1. これまで手掛けてきた膵神経内分泌腫瘍の網羅的遺伝子発現解析の結果を纏めると共に、2. 1.を膵癌の遺伝子発現解析へ発展・応用する本研究計画を本格稼働させた。 1. PNET術後組織から網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)を行い、術後再発群で有意に発現増加する細胞接着・遊走に関わる遺伝子群を同定した。これらの遺伝子発現は別検体を用いたvalidation studyでも再発群で有意に増加していることを明らかにし、原著論文として報告した(Miki M, Fujimori N, et al. Cancer Med. 8:3748-3760. 2019)。 2. 本研究計画について、九州大学病院倫理委員会に諮り、承認を得た。その後、膵癌患者から採取した血漿サンプル中にcell-free DNAが存在するかを再検証した。遠隔転移を有する膵癌2例に対して、患者同意を得た後、サンプルを採取してcfDNAを抽出した。その結果、いずれの症例からもライブラリー作成に耐えうる量のcfDNA(0.20ng/μl, 3.8ng/μl)が採取された。本研究の実現妥当性が担保されたと判断し、患者サンプル集積を継続した。現在までに8症例、10サンプルを保存している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要へ記載した通り、本研究の土台となる膵神経内分泌腫瘍術後組織における網羅的遺伝子発現の結果を纏め、原著論文として報告した。本手法を膵癌組織における解析に応用し、liquid biopsyの有用性を評価する本研究計画を始動した。一方で、倫理委員会承認や同意書取得、患者選択など、実際の患者サンプルを取得開始するまでに、当初の予定以上に時間と多方面の調整を要した。予備実験の結果を確認後、2019年度の後半よりサンプル取得を前向きに進めている。cfDNAの経時的変化を適切に評価するためには、病勢増悪時のサンプル取得が必要なため、研究開始から少なくとも半年程度の観察期間が必要である。 上記を総合して、「やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の2年目に当たる2020年度は、膵癌患者の更なる登録、サンプル取得を前向きに行い、当初の予定通り、cfDNA抽出と網羅的遺伝子発現解析を実施する。研究計画や、網羅的解析にかかる研究費の問題から、一検体毎の評価は困難であり、一定のサンプル数が確保された時点(12検体毎を予定)で実際の解析を行う予定である。 一方で、予備検討の結果から末梢血からcfDNA抽出は可能であるが、それが真に腫瘍由来を評価することが難しい点が問題点として明らかとなった。治療前サンプルとしてEUS-FNA由来検体は核酸抽出量に限界がある点と、やはり腫瘍由来かを評価することが難しい。上記の点からは、外科切除組織を比較対象とすることが望ましい。そこで新規サンプルを取得する症例選定に当たっては、膵癌術後再発症例を重点的に組み込んでいく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、まとまったサンプル数を確保することに時間を要している点である。元々の研究計画から、cfDNAの経時的変化を適切に評価するためには、病勢増悪時のサンプル取得が必要であり、各症例で少なくとも半年、可能であれば1年程度の観察期間が必要である。網羅的解析にかかる研究費の問題から、一検体毎の評価は困難であり、一定のサンプル数が確保された時点(12検体毎を予定)で実際の解析を行う予定とし、本年度の研究費を次年度分とまとめて支出する方が、研究全体から考えた際に有益と判断した。
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