研究課題
肥満が膵癌進展へ及ぼす影響をみるために、通常食で飼育した非肥満マウスと、高脂肪食で飼育した肥満マウスのそれぞれの内臓脂肪組織を抽出し、そこから脂肪前駆細胞の初代培養を行った。次に、初代培養を行った各々の脂肪前駆細胞を脂肪滴を含む成熟脂肪細胞へと分化誘導し、非肥満内臓脂肪細胞(L-Ad)および肥満関連内臓脂肪細胞(O-Ad)を樹立した。L-Ad・O-Adの各脂肪細胞とマウス膵癌細胞・ヒト膵癌細胞とを共培養を行ったところ、マウス・ヒト膵癌細胞のいずれも、L-Adと比較しO-Adとの共培養により、細胞増殖・浸潤能の有意な増加をみとめた。さらに、L-AdまたはO-Adとの共培養により刺激された後の膵癌細胞を、血管血管内皮細胞と共培養し、in vitroの血管新生 assayを行った。細胞増殖・浸潤能の結果と同様に、O-Ad刺激後の膵癌細胞は、L-Ad刺激後の膵癌細胞と比べ、有意に血管内皮細胞の運動能とチューブ形成能の上昇に寄与し、腫瘍血管新生を促進した。次に、O-Adが膵癌細胞を活性化するメカニズムを明らかするために、L-AdとO-Adの培養液中に含まれる分泌タンパク発現の違いを、プロテインアレイによる準網羅的解析により、O-Adの培養液中で著明に上昇する分泌タンパクを複数個同定した。siRNAによりO-Adからそれらの遺伝子発現をノックダウンし、同様の検討を行ったところO-Adから分泌される責任因子:Xを同定した。Xのノックダウンにより、O-Ad刺激による膵癌細胞の悪性化誘導能はキャンセルされた。現在、膵癌細胞株を、通常および肥満マウスの皮下に移植し、抗X抗体を腹腔内投与をおこない腫瘍増殖抑制効果を検討中である。
4: 遅れている
コロナウィルス感染症により、海外からの輸入試薬の入手に大幅な遅延を生じた。また、幼児を育児しながらの研究であるが、コロナウィルスに伴う種々の保育所の制限にともない在宅待機が多くなったことにより研究の進捗に遅れを生じた。
予定より軽度の遅れはあるものの、研究は進捗しており、データもでそろてってきている。種々の解析により、肥満脂肪細胞による膵癌悪性化の責任因子の候補は同定している。源氏ア、通常食で飼育した非肥満マウスと、高脂肪食で飼育した肥満マウスに膵癌細胞を移植、上記で同定した原因タンパクの抗体を注射し、膵癌の進展を観察中である。さらに肥満脂肪細胞の刺激に伴い、膵癌細胞でどのようなシグナル系が増殖・浸潤亢進因子として働いているかを現在検討中である。また、ヒト膵癌組織検体も使用し、肥満の有無と原因タンパク発現の関連性を検討する。
コロナウィルス感染症パンデミックに伴う社会的な因子から、研究計画に遅れが生じた。令和2年度に終了であった動物実験とヒトの検体解析が終了していないめ、令和3年度まで研究を延長した。
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