研究課題/領域番号 |
19K17410
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山岸 直子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40646840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NAFLD / VEGF-B / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーメンバーであるVEGF-Bは骨格筋や脂肪組織といったインスリン標的器官に作用して、脂肪酸トランスポーター(FATPs)をmRNAレベルで誘導し、細胞内の脂肪蓄積を促進することが知られている。このため、VEGF-Bは異所性脂肪蓄積治療における新たな標的因子として有望視されている。 研究代表者は、これまでに既存の胃潰瘍・十二指腸潰瘍治療薬であるランソプラゾールが、ヒト肝がん細胞株HepG2およびHep3BにおいてVEGF-Bの発現量を減少させることを見出している。しかし、ランソプラゾール投与のみでは肝細胞株の脂肪酸取り込み量を変化させなかった。そこで、様々な脂質関連因子の発現変動を測定したところ、コレステロール代謝を制御する転写因子LXRの下流遺伝子の発現量が上昇していた。さらにLXRが活性化され、その結果酸化LDLの細胞内取り込みが減少することが明らかとなった。これらの結果を元に、現在はランソプラゾール処理によるVEGF-B発現低下とLXR活性化の関係性についてさらなる解析を行っている。2022年度に予定していたVEGF-Bノックアウトマウスの導入は新型コロナウィルス感染拡大や動物施設の改修、研究代表者の病気による休職期間があったため実施不可能となった。 本年度は、野生型マウスを用いて高脂肪食負荷による非アルコール性脂肪肝モデルマウスを作製し、その病態に対するランソプラゾールの病態改善効果や肝臓におけるVEGF-B遺伝子を中心とした脂肪・コレステロール関連因子の発現変動を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度はランソプラゾールが非アルコール性脂肪肝を改善する分子メカニズムとして、VEGF-Bの発現を抑制する経路が重要なのか、それとも他の経路とくにコレステロール代謝に関連した経路を介する効果も存在するのかを明らかにするために、VEGF-Bノックアウトマウスを用いた実験を行う予定であった。しかし、数年前からの新型コロナウィルス感染拡大による研究計画の大幅な遅れと研究代表者の病気による休職期間、さらに動物施設の工事が重なったことによってVEGF-Bノックアウトマウスの導入が不可能となってしまった。そのため、肝細胞株をもちいたin vitro実験を主体とした計画を大きく変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスの導入が不可能となったため、当初の研究計画予定よりも大幅に遅れが出て次年度使用可能額が生じた。本年度は、主に野生型マウスを用いた高脂肪食負荷による非アルコール性脂肪肝モデルマウスを作製し、その病態に対するランソプラゾールの病態改善効果や肝臓におけるVEGF-B遺伝子を中心とした脂肪代謝およびコレステロール代謝関連因子の発現変動を解析する予定である。マウスや高脂肪飼料、組織学的解析、血液生化学検査、遺伝子発現解析のための試薬を購入する予定である。 また、個体レベルでのノックアウト実験の代替法として肝由来細胞株を用いたVEGF-Bノックアウト細胞株の作製を予定している。CRISPR/Cas9システムを導入することで、早期の樹立を目指し、VEGF-Bの有無によって肝細胞の脂肪代謝やコレステロール代謝変動に与える影響を明らかにする。また、ランソプラゾールを投与して同様の解析を行い、脂肪蓄積に対する影響を明らかにする。具体的には、樹立したVEGF-Bノックアウト細胞を用いた脂肪酸およびコレステロール取り込み解析、遺伝子発現解析等を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は主にVEGF-Bノックアウトマウスを用いた実験計画を予定していた。しかし、数年前からの新型コロナウィルス感染拡大による研究計画の大幅な遅れと研究代表者の病気による休職期間、さらに動物施設の工事が重なったことによってVEGF-Bノックアウトマウスの導入が不可能となってしまったため、次年度使用額が生じた。
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