研究課題/領域番号 |
19K17413
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
今井 仁 東海大学, 医学部, 助教 (40725363)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸内細菌 / 口腔内細菌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、炎症性腸疾患(IBD)の病態に関与する口腔内細菌の同定ならびに口腔内細菌叢のdysbiosisが腸管炎症を惹起するメカニズムを、炎症性T細胞との関係から解明することである。申請者はすでにマウスを用いた先行研究において、口腔内炎症モデルマウスを用いてデキストラン硫酸誘導腸炎が増悪し、この際に口腔内と糞便よりEnterobacteriaceae菌種が増加しT細胞主体の炎症を惹起することを示している。これらの菌種が、TNF-aがキーサイトカインといわれるIBDの病態において、抗TNF-抗体を中心とする既存治療に難治を示す病態や再燃寛解を繰り返す病態などに関連するのではないかと仮定し、実際の臨床検体を用いて検討を開始した。 口腔内細菌は部位により特有の細菌叢を形成するが、本研究では唾液を用いる。対象はIBDの症例と健常人のコントロール症例である。唾液および糞便検体をメタゲノム解析し、共生細菌叢の組成について、対象群とコントロール群との差異を検討する。さらに、臨床的寛解患者を対象とし、登録後1年間、前向きに追跡し、臨床的再燃の有無を調査する。 すでにIBD症例、健常人コントロールのエントリーはほぼ終了し、寛解期の症例の前向きな臨床経過を観察し記録の集積中である。 一方、唾液・糞便検体から、目的のEnterobacteriaceae菌種がメタゲノム解析で確認がとれており、健常人とIBD症例との差が認められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究部分について、IBD症例、健常人コントロールともにエントリーが順調に進み、予定通り行うことができた。また、先行研究の動物実験で得られていた腸管炎症を誘導するEnterobacteriaceae菌種が実際にヒト唾液・糞便検体で同様に認められたことで、当初の仮説が実証することができたことは大きいと考える。さらにはヒト検体から同定されたEnterobacteriaceae菌種を単離分離し無菌マウスに投与し定着するところまで評価はできている。
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今後の研究の推進方策 |
寛解期の症例の前向きな臨床経過の記録が集まり次第、口腔内環境やEnterobacteriaceae菌種の有無によるIBDの病態への影響を評価する。口腔内環境については、口腔外科の診察を受け、 蝕の有無、治療状況(詰め物の有無 矯正装置の有無)、残存歯の本数、歯周病検査、細 菌数測定、pH、口腔湿潤を評価する。それらの解析によって、口腔内環境が腸管への影響を与える全消化管の炎症惹起のメカニズムの一旦が証明されると考える。また一方、ヒト検体から同定されたEnterobacteriaceae菌種を無菌マウスに投与し定着する点まで完了しており、今後、腸炎の誘発の有無を評価する。また、患者末梢血よりメモリーT 細胞(CD4+CD45RO+)を分離し、当該細菌と単球分画とを共培養し抗原提示を行い、細菌応答性の炎症性サイトカインの変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物飼育費が計画より少なくすんだこと、また臨床検体の集積の結果から、16srRNA解析費用の一部を次年度分に利用する計画となったため。
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備考 |
researchmapサイト https://researchmap.jp/jin07032001/
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