炎症性腸疾患(IBD)は一旦「寛解」するも「完治」はせず、再燃するため罹病期間が長期となる難病である。寛解時の腺管のねじれなど腸管上皮細胞の形質塑性は以前より指摘されているがその原因は不明である。申請者は長期炎症で不可逆的に機能不全に陥った上皮細胞「塑性」こそ病態の根幹であり、塑性獲得機構及びリセット機構の解明がIBD病態解明や治療法開発に直結すると着想した。本研究は独自に構築したマウス腸管体外長期炎症モデルをさらにヒト体外長期炎症モデルにまで発展させ、ヒト腸管上皮幹細胞における長期炎症下での塑性獲得機構及び塑性リセット機構を解析する。今年度はヒトIBD擬似モデルの構築の条件を確定させた。慢性炎症及び炎症塑性モデルはマウスで既に確立済み(J Crohns Colitis 2017)であり、その条件を基盤としてヒト慢性炎症モデルを確立した。ヒトオルガノイド炎症応答レセプター発現を確認し、マウス大腸オルガノイドでは発現していないTLR3の発現及びPoly(I:C)刺激応答を確認している。刺激物質カクテルを選定し炎症環境を模倣した培養条件を決定し、60週間の持続刺激を確立した。また経時的にRNAを抽出し、マイクロアレイにて網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、フェーズ特異的遺伝子の抽出、パスウェイ解析によるシグナル変遷を明らかとした。
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