研究実績の概要 |
Mdm2欠損Kras変異肝発癌モデル(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 fl/fl AlbCre)において、p53の活性化に伴う肝障害の機序について検討を行った。同マウスでは、Mdm2野生型Kras変異肝発癌モデル(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 +/+ AlbCre)に比し血清caspase 3/7活性が上昇し、TUNEL染色陽性肝細胞の増加を認めたことから、肝細胞アポトーシスの亢進が示唆された。また同マウスではβ-galactosidase陽性肝細胞が増加し、肝細胞の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、Ccl2)産生が増加していたことから、肝細胞の細胞老化およびsenescence-associated secretary phenotype (SASP)の亢進が示唆された。以上の結果から、Mdm2欠損Kras変異肝発癌モデルにおける肝障害は、肝細胞におけるアポトーシスおよびSASPの亢進が一因であることが示唆された。 さらに同マウスにおける肝前駆細胞の存在について検討した。同マウスの背景肝では肝前駆細胞マーカー(AFP, CD133, CK7/19)の発現が上昇しており、免疫染色にて同マーカーを発現する肝前駆細胞の存在を認めた。同マウスに形成された肝腫瘍は、肝前駆細胞から広がるように形成されており、肝前駆細胞が腫瘍の発生母地である可能性が示唆された。 Kras変異肝発癌モデルにおいて、Mdm2の欠損により認められるこれらの現象は、Mdm2に加えてp53も欠損させることにより(KrasLSL-G12D/+ Mdm2 fl/fl p53 fl/fl AlbCre)消失したことから、肝細胞におけるp53の活性化が原因であることが示された。
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