三次元培養下での膵癌細胞株と脂肪組織の相互作用について研究した。脂肪組織と共培養した群では、膵癌細胞の肥大化、重層化、構成する腺管の増加が見られた。また、細胞増殖能の増加ならびにアポトーシスの抑制を免疫染色で確認した。以上より、脂肪組織が膵癌細胞の形態を変化させ、生存・増殖・浸潤の活性化を担っていることが判明した。 RNA micro arrayを用いて、膵癌細胞株が脂肪組織により影響される変化を網羅的に解析した。脂肪組織と共培養した膵癌細胞株において、Interferon Alpha Inducible Protein (IFI)、C-X-C motif chemokine (CXCL)、interferon regulatory factor(IRF)のmRNA発現増加が見られた。Western blot analysisで、上記タンパク発現を解析したところ、脂肪組織と共培養した群において、IRF9のタンパク発現増強が見られた。さらに、IRF9が関与するsignal pathwayに着目し、IRF9/STAT pathwayのSTAT1、STAT2、STAT3のタンパク発現が増加していた。 また、培養液中のIFN濃度を測定したとこと、脂肪組織と膵癌細胞株を共培養した群においていIFN濃度が上昇していた。以上のことより、膵癌細胞と脂肪組織の相互作用において、インターフェロン(IFN)とinterferon regulatory factor(IRF)が関与していると考えられた。 当初の予定では、IRF-9をターゲットとした阻害剤の作成を予定していたが、遂行できなかったた。そのため、今後は阻害剤の作成、IFN増加のメカニズムの解明などを行っていきたい。
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