研究課題/領域番号 |
19K17441
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
堀 寧 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90781302)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重症急性膵炎 / 急性膵炎 / 重症化 / ヒト遺伝子要因 |
研究実績の概要 |
高率に致死的な経過をたどる重症急性膵炎の診療において、重症化の早期予測法の開発およびその予防は緊急課題である。血液検査や画像診断法による重症化の早期予測はいくつか報告があるが、網羅的解析に基づいた個体差に関わるヒト遺伝子要因は明らかになっていない。本研究では、single nucleotide polymorphisms(SNPs)に注目したGenome-Wide Association Study(GWAS)解析を用い、重症化しない膵炎と重症化する膵炎について遺伝学的プロファイルを作成比較し、「重症化リスクの要因遺伝子」を同定する。 2016年から2017年までの米国留学時の研究にて、急性膵炎とくにその重症化が慢性膵炎への移行を加速度的に進め、膵内外分泌機能障害を引き起こすことを明らかにし、その内容を論文化することを達成した(Hori Y, Vege SS Chari ST, et al. Pancreatology. 2019; 19(2): 224-229.)。その中で、急性膵炎の重症化および再発の予防が、慢性膵炎への移行や機能障害を起こさせない重要課題であることを提唱した。 しかし、診断後の重症化や治療反応など疾患活動性について臨床経過の個体差は大きく、この個体差に関わるなんらかのヒト遺伝子要因が存在する可能性について改めて認識した。当院および共同研究施設において急性膵炎と診断された患者を対象とし血液検体由来のゲノムDNAを用いて、日本人に最適化された約66万SNPの解析が可能なマイクロアレイ(ジャポニカアレイ、東芝)を用いて網羅的にSNPタイピングデータを得た後、Case-control studyを行うことにより候補SNPを得ることを目的とし、2020年5月現在、110例の膵炎患者の血液検体採取を終えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性膵炎とくにその重症化が慢性膵炎への移行を加速度的に進め、膵内外分泌機能障害を引き起こすことを明らかにし、その内容を論文化することに成功した。その中で、急性膵炎の重症化および再発の予防が、慢性膵炎への移行や機能障害を起こさせない重要課題であることを提唱し、本研究の方向性が正しいことを確認した。しかし、急性膵炎診断後の重症化や治療反応など疾患活動性について臨床経過の個体差は大きく、なんらかのヒト遺伝子要因が背景に存在する可能性についてあらためて認識した。血液採取を重症60例、軽症100例程度を予定しており、引き続きの検体採取を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
継続して血液検体採取を急ぐ。その検体由来のゲノムDNAを用いて、マイクロアレイを用いて網羅的にSNPタイピングデータを得た後、Case-control studyを行うことにより候補SNPを得る。さらに、本GWASで得られたSNPタイピング情報を参照パネル(1KJPN panelなど)の遺伝子配列データに当てはめるSNP imputationの手法を用いて、GWASで使用するアレイには搭載されていない疾患感受性SNPの同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現定量に必要な Real-time PCR system、次世代シークエンサーなどは共同研究室に常備されており、現在の研究環境について問題はない。本研究は、所属する大学および付属病院で臨床治験委員会の承認を既に得ており、検体の採取を継続している。現在得られた検体が、良質な検体であることを引き続き確認をすることを予定している。それにより本研究の実現可能性が高いものであることを継続確認していく。
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