研究課題
良性疾患にも関わらず、致死的な経過をたどる場合のある重症急性膵炎の診療において、重症化の早期予測法の開発およびその予防は緊急課題である。血液検査や画像診断法による重症化の早期予測はいくつか報告があるが、個体差に関わるヒト遺伝子要因は十分に明らかではない。SNPsに注目したGWAS解析を用い、重症化しない膵炎と重症化する膵炎について遺伝学的プロファイルを作成比較し、「重症化リスクの要因遺伝子」を同定することが本研究の目的である。申請者は、2016年から2017年までの米国留学時の研究にて、急性膵炎とくにその重症化が慢性膵炎への移行を加速度的に進め、膵内外分泌機能障害を引き起こすことを明らかにしている(Hori Y, Vege SS Chari ST, et al. Pancreatology. 2019; 19(2): 224-229.)。その解析の中で、急性膵炎の重症化および再発予防が、慢性膵炎への移行や機能障害を起こさせない重要課題であることを提唱した。しかし重症急性膵炎は、治療不応にて致死的な経過をたどるケースもあり、治療反応性の個体差は大きく、この個体差に関わるなんらかのヒト遺伝子要因が存在する可能性を考えている。当院および共同研究施設において急性膵炎と診断された患者を対象とし血液検体由来のゲノムDNAを用いて、日本人に最適化された約66万SNPの解析が可能なマイクロアレイを用いて網羅的にSNPタイピングデータを得た後、Case-control studyを行うことにより候補SNPを得ることを目的とし、2021年5月現在、140例の膵炎患者の血液検体採取を終えている。
3: やや遅れている
急性膵炎とくにその重症化が慢性膵炎への移行を加速度的に進め、膵内外分泌機能障害を引き起こすことを明らかにし、その内容を論文化することに成功している。その中で、急性膵炎の重症化および再発の予防が、慢性膵炎への移行や機能障害を起こさせない重要課題であることを提唱し、本研究の方向性が正しいことを確認した。また慢性膵炎の急性増悪を防ぐための処置具(ステント)の有用性も新たに報告して論文化に成功している。引き続きの検体採取が必要である。
継続して血液検体採取を急ぐ。その検体由来のゲノムDNAを用いて、マイクロアレイを用いて網羅的にSNPタイピングデータを得た後、Case-control studyを行うことにより候補SNPを得る。さらに、本GWASで得られたSNPタイピング情報を参照パネル(1KJPN panelなど)の遺伝子配列データに当てはめるSNP imputationの手法を用いて、GWASで使用するアレイには搭載されていない疾患感受性SNPの同定を試みる。
検体採取を引き続き行っており、その解析に十分な費用が必要となる。次年度にそれを予定している。計画的な症例選択が必要になるため十分な数の検体が必要となる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Scientific Reports
巻: 11(1) ページ: 8285
10.1038/s41598-021-87852-1