研究課題/領域番号 |
19K17442
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
高谷 広章 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (40745460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / バイオマーカー / VWF / ADAMTS13 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の発症や進展には血管新生が重要な働きをしていることは広く知られているが、近年、血液凝固も悪性腫瘍の発症や進展に重要な働きをしていることが報告されている(Pépin et al. J Thromb Haemost. 2016, Demers M et al. Oncoimmunology. 2013)。ところで凝固因子であるVWFと凝固制御因子であるADAMTS13は肝硬変の病態と関連があることを我々は報告している(Takaya et al. Hepatol Res. 2012) 。両因子はVEGFの制御を介して血管新生と関連 (Randi et al. Mediterr J Hematol Infect Dis. 2013, Randi. Blood. 2017 )しており、両因子に着目し肝細胞癌(HCC)に対する新規バイオマーカーの探索をおこなった。早期HCC合併肝硬変患者とHCC非合併肝硬変患者のVWFとADAMTS13を比較検討することで、両因子がHCCの早期診断マーカーとして既存の腫瘍マーカーと同等もしくはそれ以上の診断能を有し、VWFとADAMTS13は腫瘍体積や進展度とも関連することを明らかとした(Takaya et al. BMC Gastroenterol. 2019 )。またソラフェニブ治療を行った進行HCC患者において治療効果予測および予後予測マーカーとしてVWFとADAMTS13が有用であることを明らかとした(Takaya et al. World J Gastrointest Oncol. 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCCに対する新規バイオマーカーの開発は順調であり、診断マーカーや薬物療法効果予測マーカーとしてVWFとADAMTS13が有用であることが明らかとなった。動物実験で行っているVWFを用いた副作用の少ないHCC新規治療法の開発は現在、薬剤の最適な用量設定を行っている。以上より全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、HCCに対する新規バイオマーカーの開発を行っていく。HCCの薬物療法は近年様々な薬剤の開発が盛んに行われているが、副作用の報告が多い。このためソラフェニブ以外の薬剤治療患者においてもVWFやADAMTS13などのHCCの病態に関与する因子を測定し、治療効果や副作用の指標となるマーカーの確立を行う。そして動物実験にて副作用の少ないHCC新規治療法の開発を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験よりも臨床検体を用いた研究を中心に本年度は行ったため次年度使用額が生じたと考える。今後も進捗状況をみながら適切に使用していく予定である。
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